同級生マイナス
40代くらいの中年のオッサン4人組はそれぞれに人生への葛藤を抱えていて、うまく好転しない日々に閉そく感を覚えている。では、何かをするかといえば、積極的に事を動かそうともしない。流されるままに生きていく中で、各人が個人的な体験をしていく。そして彼らはどうなっていくのか。ネタバレあり。
―2020年製作 台 122分―
解説・スタッフとキャスト
解説:それぞれ人生に行き詰まった同級生たちの姿を描くブラックコメディー。高校時代からの友人である4人の中年男性がかつてのたまり場に集まり、しばしの間家庭や仕事から現実逃避しようとする。ホアン・シンヤオ監督がメガホンを取り、『ひとつの太陽』などのチョン・モンホン監督と、『祝宴!シェフ』などのプロデューサー、イェ・ルーフェンが製作総指揮を担当し、シー・ミンシュアイ、チェン・レンシュオ、リン・ユージー、リウ・グァンティンらが共演する。(シネマトゥデイ)
監督・脚本:ホアン・シンヤオ
出演:シー・ミンシュアイ/チョン・レンシュオ/リン・ユージー/リウ・グァンティン/チェン・イーウェン
ネタバレ感想
ネットフリックスで見つけて、何となく気になってたので鑑賞してみた。台湾は旅行したこともあるし、飯がうまいので好きな国。であるから、食事シーンがいっぱい出てくるといいなと期待したけど、そういう描写はなくて残念。
まぁそれはおいといて、同級生4人組がそれぞれの個人的に抱える人生への鬱屈とどう向き合っていくのかということが描かれているのだと思われるが、この人たちは特に大きな成長をするわけでもなく、人生が好転するわけでもなく、劇終を迎える。
引用した解説によると、ジャンル的にはブラックコメディのようだが、彼らと同じく40代で今の仕事をこのまま続けている日々に悶々としたものを感じつつ、それを変えるような行動がうまくできていない自分の境遇が嫌でも重なってしまって、とてもコメディ的には鑑賞できなかった。
とはいえ、卑屈な気持ちになったとか、気分が落ち込んだとかそういうことはない。特に何の爽やかさもなく、何かのカタルシスがあるわけでもなく終わっていくラストの展開は、まぁそんなもんだよねーーという人生への諦念みたいなものが画面から伝わってくる。
それはもちろん個人的にそう感じたのであって、やっぱり自分がこの作品の登場人物らと同年代であることからくる、作品への印象だろう。
ちなみにこの作品は冒頭で出てくる映画監督が狂言回しとして、姿は冒頭とラストでしか見られないものの、ちょくちょく登場してくる。この監督もどうやらこの4人と友人関係にあるのか、彼ら一人一人と会話をするシーンもある。ラストはこの物語自体をこの監督が撮影していて、友人の死よりも選挙を優先してるように見える男に対して、怒りの鉄拳制裁をかますわけだが、そういう意味ではあのラストはなかなかコミカルでもあった。
ともかく、監督の視点からこの4人の日常を切り取っているように思われるこの作品。繰り返しになるけども、誰も何も成長しないし、何かの希望を見出すわけでもない。
一人、無能な映像監督だった男はたまたま知り合った政治家から、傀儡議員として立候補させられることになり、なぜかそれを受けて、しかも傀儡としてではなくマジに政治の世界に入って行こうとする。彼が唯一何かが変わった(そして人も変わったように思える)のかもしれない。だが、そのことが他の友人の癪に障り、ラストのいさかいにつながっている。
吃音が治って死んでしまった男は気の毒でしかない。彼はつましいながらも幸せな生活を送れそうな兆しが見えていたのに、勘違いで何者かにリンチされて殺されるという何とも悲しい人生の幕引き。
保険会社で働いている男は、同い年の上司にグダグダと文句を言われたり客にクレーム入れられたりなどなどでブチ切れて、退社途中に池で泳ぎ始めるというわけのわからない行為をする。
もう一人、役所の仕事をすることになった貧乏な男は、学生時代に片思いをしていた女と再会することになり、彼女と関係を持てそうなところまで行くんだけど、彼女を偶像的に想っていた彼にとっては、肉体の関係は必要なかったようで、関係を持たずに彼女のもとを去るという選択をする。
俺はこの行為には共感ができなかった。俺も高校生の頃片思いしてて振られた相手がいて、その女と20代後半で再会し、再びアタックしたが玉砕、通算2回振られるという離れ業をしたことがあるが、この相手とまた再会したとしたら、負けたままのような気分を解消したいので、関係を持てるチャンスがあれば、逃さないようにするだろう(たぶん成功しないだろうが)。という意味では、この作品の彼のほうがピュアってことなんかもしらん。
しかしまぁ、彼の夢の中なんなのか、唐突に元AV男優の加藤鷹が現れたのには驚いた。しかも尊敬してるとかって頭いかれてるとしか思えないんだが、台湾でも知られている加藤鷹はすごい(笑)。
てなことで、なんだかよくわからん映画だったが、見て損はない作品であった。
この作品は、ネットフリックスで鑑賞できます。
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