ベルベット・レイン
―2005年公開 香 85分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:香港黒社会の大ボス暗殺計画を軸に、大ボスとその弟分、ヒットマンの若者2人組それぞれのドラマを交錯させて描く香港ノワール。出演は、香港四天王のアンディ・ラウとジャッキー・チュン、新・四天王の呼び声も高いショーン・ユーとエディソン・チャン。監督は、本作で商業映画デビューを果たしたウォン・ジンポー。本作で香港電影金像奨の最優秀新人監督賞を受賞した。(KINENOTE)
あらすじ:レストランの厨房で働くイック(ショーン・ユー)に、暗殺者を決めるクジ引きの連絡が入った。この日を待ちわびていたイックは、チンピラ仲間のターボ(エディソン・チャン)と会場のディスコに駆けつける。黒社会で尊敬を集めている大ボス、ホン(アンディ・ラウ)の暗殺計画の噂に、配下の3人のボスは戦々恐々となり、互いに腹を探りあう。ホン亡き後に彼の兄弟分の冷酷無慈悲なレフティ<左手>(ジャッキー・チュン)が台頭すれば、たちまち大混乱に陥り自分たちの利権も脅かされることになる。イックと一緒に一旗揚げたいターボは、彼のために秘所にリンゴの刺青があるという当たりクジの娼婦、ヨーヨー(リン・ユアン)を探し出すが、ボスのトウ(チャップマン・トウ)がイックに渡した武器は、拳銃ではなくナイフ。イックは不安と悲壮な決意を胸に、一目で惹かれていたヨーヨーを荒々しく抱く。一夜の関係で終わりたくはない。だが、ヨーヨーは多額の借金を抱える身だった。パーティーの最中、ホンは妻エミリー(ウー・チェンリェン)が息子を出産したという報せを受け、レフティと病院へ向かう。父親になり感慨深げなホンに、レフティは「ニュージーランドへ移住しろ」と引退を勧める。思いがけない言葉にとまどうホン。黒手袋をしたレフティの右手は二人の友情の証だが、一緒に戦った日は遠い過去。果たしてレフティは、守るべきものができたホンの身を案じているだけなのか? それとも、彼こそが暗殺計画の黒幕なのか? イックはボスからの謝礼を母に渡そうとするが、彼が亡き父と兄と同じ運命を辿らないことを願う母は、その金で銃を買うように言う。兄が罠にかけられたとき、無謀にも加勢しようとしたイックを必死で止めたのはターボだった。イックはターボの助けを借りて荒っぽいやり方で銃を手に入れると、金をそっくりヨーヨーに渡し、さらに手当たり次第に強盗を働いて金を作る。ヨーヨーは心を動かされ、「必ず戻ってきて」と泣きながらイックに約束させる。ホンとレフティは、レフティが買い取った二人の思い出のレストランでテーブルにつく。ホンは敵を一家皆殺しにするレフティのやり方を批判するが、3人のボスを危険視していたレフティは彼らを一掃すべく、すでに子分たちを送り出していた。しかし、一人目のボスが家族もろとも殺された後、他の二人は間一髪でホンの子分に保護される。一人を見せしめにし、残りを許して救う。それが賢明なやり方だ。ホンはまた、レフティの母親をもエミリーのもとに保護していた。イックとレストランで食事中に、ターボは自分たちを探す敵の姿に気づき、囮になる。右手を潰されてもイックをかばい続けるターボ。そこへ駆けつけ、発砲しまくるイック。ターボは弾の切れた銃で瀕死の敵を殴り、家族を皆殺しにするために住所を聞き出す。ホンはレフティに言う。「妻子を守ってこそ真のボスだ。俺を殺せる者がいるとしたら、お前だけだ」と。レフティはようやく自分の間違いに気づく。外は雨。ホンに傘を差し掛け、一緒に歩きだすレフティ。ナイフを手に標的に向かっていくイック。二組の男たちの運命が、雨の中で交わろうとしていた。(KINENOTE)
監督:ウォン・ジンポー
出演:アンディ・ラウ/ジャッキー・チュン/ショーン・ユー/エディソン・チャン/ウー・チェンリン/リン・ユアン/チャップマン・トウ/エリック・ツァン/ラム・カートン/ラム・シュ
ネタバレ感想
アンディラウ(ホン)にジャッキーチュン(レフティ)、ショーンユー(イック)とエディソンチャン(ターボ)が主演の裏社会で生きる男たちの顛末を描いた作品。脇役にチャップマントウ、エリックツァン、ラムカートン、ラムシュらが顔を出してるところもなかなか豪華。
物語はホンとレフティとその傘下のボスたちの跡目争いと、イックとターボが裏社会で名を成そうとする話が入れ替わり立ち代わり描かれて錯綜する展開になっている。この描写によりホンの命を狙っているのがイックであるように見せかけておいて、実はホンが成長した姿がイックであり、ターボのそれがレフティだということがラストの展開でわかるようになっている。
では、最後、仲直りしたように見えるホンとレフティに、雨の中で襲撃をかけてくる集団は誰の差し金だったのかということになるわけだが、レフティが自分の配下に襲撃を止めさせるように言ったものの、それが伝わらずに、もしくは部下の裏切りにあったというパターンか、それとも他の奴らの放った刺客だったのか、その辺はよくわからん。
あと、イックと恋仲になる娼婦、ヨーヨーの存在があまり意味をなしてないような。ホンの奥さんはエミリーという名だし、どう見ても同一人物には見えないんだけど、あれはどっちなんだ? 同一人物だという描写はないし。
ということで、ストーリー的に面白いかというと、それほどではないんだけども、ホンとレフティが会食をして、組織を守るとはどういうことなのかという話を続けるシーンが個人的には好き。
この2人のシーンはほぼレストラン内で進んでいて、そこがこの映画の良さなのである。また、ジャッキーチュンの狂気に満ちた表情や演技が冴えていて、アンディラウよりも存在感があっていいのだ。
あと、ホンは家族を持っても組織を守り続けられるし、それをするのが大親分の役目なのであるという自説を展開するわけだが、これをやり切れる組織犯罪者たちって少なくて、たいていは組織は維持できてても、ボスの家庭は崩壊したりするもんだが、それをやらない自信があるってのはなかなかスゴイ。
ただ、彼はそれをやり切る前に暗殺されちゃってるわけだからその時点で自説は崩れてしまっているんだが。
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