偽りの隣人 ある諜報員の告白
次期大統領に出馬する予定の野党政治家イウィシクが帰国。国家安全政策部は彼を逮捕し、自宅に軟禁。それを監視する役割を担う諜報員のデグォンだったが、ウィシクの隣人として仕事をする中で彼の心境に変化が起き始めて――。実在の金大中をモデルにしたフィクション。コミカルな展開から中盤以降はシリアスになっていく娯楽作品。ネタバレあり。
―2021年公開 韓 130分―
解説:「7番房の奇跡」のイ・ファンギョンが監督、軍事政権下の韓国を舞台にした社会派サスペンス。国家安全政策部は野党政治家ウィシクを逮捕。自宅軟禁中のウィシクを監視するデグォンは、家族と国民のことを思う彼の声を盗聴するうちに、上層部に疑念を抱く。「レッド・ファミリー」のチョン・ウが正義感の強い諜報員ユ・デグォンを演じ、「朝鮮名探偵 鬼<トッケビ>の秘密」のオ・ダルスが政治家イ・ウィシク役で約2年ぶりに映画界に復帰した。(KINENOTE)
あらすじ:1985年、軍事政権下の韓国では、国家による弾圧が激しさを増していた。野党政治家イ・ウィシク(オ・ダルス)は次期大統領選に出馬するため帰国。しかし空港に到着するなり国家安全政策部により逮捕され、自宅軟禁を強いられる。ウィシク監視のため、諜報機関は当時左遷されていたものの愛国心は人一倍強いユ・デグォン(チョン・ウ)を監視チームのリーダーに据えた。デグォンは隣家に住み込み、24時間体制で監視。機密情報入手のため盗聴器を仕掛けたところ、聞こえてくるのは、家族を愛し、国民の平和と平等を真に願うウィシクの声。そんな声を聞き続けるうちに、デグォンは上層部に疑問を持ち始める。そんな中、ウィシクと彼の家族に命の危険が迫り……。(KIENOTE)
監督・脚本:イ・ファンギョン
出演:チョン・ウ/オ・ダルス/キム・ヒウォン/イ・ユビ/チョ・ヒョンチョル/チ・スンヒョン
ネタバレ感想
実在の人物がモデル
レンタルで鑑賞。韓国映画はこういうノンフィクションに近い映画を娯楽的に作品にまとめるのがうまいねぇ。今作のイウィシクのモデルになったのは、金大中だそうだ。
そうした題材を用いて、ある諜報員と大統領候補の交流を言葉をあまり用いずに描いていて、いろいろと悲惨なことはあるものの、ラストはスッキリさせてくれる娯楽作品になっている。
役者陣も韓国映画をたくさん鑑賞していればよく見かける面々がいて、どれも個性的。デグォンを演じた人は前にも他の作品で観たことがあるが、今作では大泉洋に見えて仕方なかったな(笑)。
コメディからシリアスな展開に
序盤から中盤くらいまでは、ウィシクの家を監視するデグォンたちのドタバタ劇が展開されて、コメディタッチ。彼の屋敷に侵入するデグォンの部下2名のくだりなどは、なんだか昔のドリフターズのコメディを見せられてるような感じだ。
この監視作戦はなかなかザルで、ウィシクは盗聴されてるのに気づいてるくせに、すべての盗聴器を探そうとしないし、そもそもデグォンたちが間抜けすぎて、バレないほうがおかしいような対応しかできてない。まぁその辺も含めてコメディっぽいんだけど。
ところが、ウィシクの同志である男が政府の陰謀で亡きものにされてからは、コメディ的な展開から一転して、シリアスになっていく。そこからはデグォンが上役の横暴に疑問を持ち始め、真の愛国心と家族愛のためにウィシクを陰ながら支援していくようになる。
デグォンはもともと愛国者であることを買われて上役に監視役を命じられたのだが、ウィシクとの交流を通じて、彼こそが他者を愛する真の愛国者であることに気付いていく。そこをセリフに頼らずに描写だけで説明しているところが見事。
こういう映画が韓国ではいくつも製作されて、それなりにヒットをしているのは、韓国の人たちが日本人よりも政治に無関心ではないってことを示しているようにも思える。
日本だとこういうフィクションって、あんまり出てこないもんなぁ。俺が知らないだけかもだけど。いずれにせよ、コメディチックでありながら社会派な内容で、なかなか楽しめる娯楽作品でありました。
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