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映画 PITY/ある不幸な男 ネタバレ感想 犬が気の毒

PITY/ある不幸な男
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PITY/ある不幸な男

奥さんが危篤になったことによって、クリーニング屋に同情され、隣人の主婦は毎朝、ケーキをつくってくれて、父や友人らも自分のことを気にかけてくれるようになった。不幸な状況を同情してもらえることに快感というか幸福感を覚えるようになってしまった男の話。期待したほどには主人公に魅力がなく、あんまりおもしろくなかった。ネタバレ。

―2018年製作 希=波 99分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:カンヌ国際映画祭脚本賞受賞作「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」のエフティミス・フィリップが脚本を手掛けたサイコスリラー。事故で昏睡状態に陥った妻を抱え、周囲に支えられて暮らす男。妻が目覚めた時、男の狂気が覚醒する。監督のバビス・マクリディスはギリシャの新鋭。(KINENOTE)

あらすじ:ティーンエイジャーの一人息子と小綺麗な家に暮らし、健康で礼儀正しく、概ね身だしなみもいい一見何不自由ない弁護士の男。しかし、彼の妻は不慮の事故により、昏睡状態に陥っていた。その日常は妻を想ってベッドの隅で咽び泣き、取り乱すことから始まる。彼の境遇を知り、毎朝ケーキを差し入れる隣人、割引をするクリーニング屋、気持ちに寄り添う秘書など、同情心から親切になる周囲の人々。この出来事がもたらした悲しみは、いつしか彼の心の支えとなり、次第に依存してゆく。そんなある日、奇跡的に妻が目を覚まし、悲しみに暮れる日々に変化が訪れる。やがて楽園を失った男は自分自身を見失い、暴走していく……。(KINENOTE)

監督:バビス・マクリディス
脚本:エフティミス・フィリップ
出演:ヤニス・ドラコプロス/エヴィ・サウリドウ/マキス・パパディミトリウ

ネタバレ感想

レンタルで鑑賞。脚本の人は『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』などを手がけたけっこう有名な人みたい。そういうのを知らず、あらすじに惹かれて鑑賞してみたけど、あんまりおもしろくなかったな。

他者の意識が自分に寄り添う形で向けられることに幸福を感じてしまう自己本位な男は、奥さんが快復したことで本来は幸福なはずなのに、それでは“不幸という名の幸福感”が足りなくなってしまったようだ。要するに、他人からの同情心を失ったことが受け入れられないってことだったみたい。であるから彼は、奥さんが危篤状態だった頃に戻るために、狂気にみちた暴走を始めるのである。

何をしたかというと、奥さんが未だに危篤であるかのようにクリーニング屋らに吹聴する。さらに、愛犬を海上に置き去りにしてしまう。そして、奥さんが入院してた部屋のよくわからない入院患者に対して、奥さんにしていた時と同じような儀式を行う。

しまいには、弁護士の仕事で自分が担当した事件になぞらえて、実の父、そして奥さんを殺してしまうのだ。さらに物語ラストでは、息子も殺しちゃうんじゃなかろうかーーということが示唆されていた。

そんなことをして誰が同情してくれるのかよくわからないので、主人公のやっていることは常軌を逸している。この主人公は最初っから何だかヘンテコな人間で、メチャクチャ几帳面で神経質な男なんだなぁと思わせる。その男が、妻が快復して以降、そのヘンテコさに拍車がかかってくるのだ。

特にキモいのは、執拗に隣人の奥さんにケーキをつくってもらいたがること。自分を客観的にみることができれば、あんな行為は犯罪行為と言えなくもないのであって、そんなことを平然とできてしまう自分を顧みる力がなくなっているのだ。

ということで、不幸に浸ることが幸福な人間のように見せかけておいて、この男は単に自分が人に優しくしてもらいたいカマチョ野郎でしかなくて、第三者的視点で言えば、こいつは全然不幸な男でもなんでもなく、単なるイタい奴で、キモいクズでしかない。

個人的には、こんなアホみたいな男の話ではなく、もうちょっと善悪を超えたというか、普通の人間とは全く異なる価値観を持つ男が、表向きには善人として生きているのに、心の中では善悪を超えた地平に価値観を見出しており、そのギャップに苦悩する話ーーってな感じに期待しちゃったんだけど、そんな他人に説明しても意味わからんような俺の感覚が、作品になるわけもないわな(笑)。

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