マルコヴィッチの穴
―2000年公開 米 112分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に入れる不思議な穴をめぐる、奇想天外なガジェット・ムーヴィー。監督はこれがデビューのスパイク・ジョーンズ。脚本・総指揮もこれがデビューのチャーリー・カウフマン。撮影は「バッファロー’66」のランス・アコ ード。出演は「ラウンダーズ」のジョン・マルコヴィッチ、「狂っちゃいないぜ!」のジョン・キューザック、「エニイ・ギブン・サンデー」のキャメロン・ディアス、「アウト・オブ・サイト」のキャスリーン・キーナーほか。2000年ゴールデン・サテライト賞作品賞と最優秀助演女優賞受賞。(KINENOTE)
あらすじ:人形使いのクレイグ・シュワルツ(ジョン・キューザック)は、ペットショップに勤める妻ロッテ(キャメロン・ディアス)と貧乏な二人暮らし。ある日、彼は定職に就こうと新聞の求人欄を広げ、マンハッタンのビルの71/2階にある会社、レスター社の職を得る。そこで美人OLのマキシン(キャスリーン・キーナー)に一目惚れした彼は、彼女を追いかけるが相手にしてもらえない。そんな時、会社の一室で、有名俳優ジョン・マルコヴィッチの頭の中に15分間だけ入れる穴を見つけてしまう。クレイグはそれを使って商売を始め、次々と客をマルコヴィッチの穴に入れていく。が、それに気付いたマルコヴィッチ本人が自分の穴に入ってから事態はややこしくなってくる。ロッテがその穴に入り、男としてマキシンと性体験して子供まで作ってしまったりと、どんどんエスカレート。クレイグは元の人形使いに戻り、マルコヴィッチはねじれた世界へ突入していくのであった。(KINENOTE)
監督:スパイク・ジョーンズ
脚本:チャーリー・カウフマン
出演:ジョン・キューザック/キャメロン・ディアス/キャサリン・キーナー/チャーリー・シーン/ジョン・マルコヴィッチ/ショーン・ペン/ブラッド・ピット/ウィノナ・ライダー
ネタバレ感想
この映画、初めて鑑賞したのが20代の頃、BSか何かで放映されたとき。で、なんだかようわからん内容だけど印象に残ったので、すぐにDVDを購入して未だに数年に一回は観ている。要するに、このブログでもいつかは紹介したいと思っていた、好きな作品なのである。
とは言っても、ストーリーはそれなりにしっかりしてるけど、話としてはかなり荒唐無稽なので説明に困る(笑)。さらに描かれる内容もぶっ飛んでいるため、この作品が何を鑑賞者に伝えようとしているのか、はたまたそんなものはないのか、その辺もよくわからん。
だが、面白いものは面白いのだ。だから、面白いと思う部分を紹介していく。
まず、荒唐無稽と述べた、話の筋自体が面白い。中にはシニカルでありつつも笑えるシーンも散見されて、そこが良い。
穴を通じて意識に侵入され操られ役となるジョン・マルコヴィッチ扮するジョン・マルコヴィッチ以外の主要人物はクレイグとロッテ夫妻。そして美女のマキシン。さらにはクレイグが働くことになる、7と2分の1階にオフィスを構えるレスター社長。
全員おかしな人間で、けっこう自分本位。特に夫婦とマキシンはマルコヴィッチの穴に関わって以降、変わっていく。例えばクレイグは、人形師としてブレイクしたいという自分の欲望を、マルコヴィッチの名声を利用して果たそうとする。
ロッテは従順な妻だと思わせておいて、穴に入ったことで自分の性的倒錯に気付き、男として生きたいという欲望を持つように。そんで、マキシンとの関係を続けるために不貞をいたすようになる。
マキシンは元から独善的な性格で、自分に好意を持つクレイグとロッテの心をもてあそび、人形師として大成していくクレイグと心のない結婚をしたのち、その関係は冷え、最終的には彼を捨てる。
とかまぁそういう、それぞれの持つ性格の悪さや自己本位なところは、ある意味でストーリーを楽しむための設定みたいなもので、ともかく最初から最後まで、なんだかよくわからんのに楽しめるのである。
作中で、マルコヴィッチの穴に入ったクレイグが、形而上的疑問が湧いてくる――と興奮気味に話すシーンがある。本当にそうだ。そういうことをいっぱい考えられる作品だ。だが、作品そのものの中で、それらの形而上的疑問を解き明かそうとかそういう表現はない。説明も何もない。
だが、そこがいいのである。マルコヴィッチがマルコヴィッチの穴に入ると、なぜ全員がマルコヴィッチにしか見えないのか――そこについて説明はない。けど、単に面白いからそれでいいのだ。
そもそもマルコヴィッチの穴にどうしてマルコヴィッチ自身が入れるのかというのも、よく考えてみると意味が不明たじ、そもそもマルコヴィッチに穴があること自体が意味不明なので、要は意味不明なのである。
と、何の紹介にもなってない俺のバカな感想も意味不明なので、もうやめる。いろいろ解釈可能だけど、面倒くさいことせずに、意味不明さをそのまま楽しめる作品てのがすごいところだ。
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