ステイ
序盤はまだしも、ラストに近づくにつれて、描かれる世界に脈絡がなくなってきて鑑賞者を混乱させる内容。とはいえ、こうした幻想的な作風の映画としては、ラストもスッキリ全容をわからせてくれるので、消化不良感はさほどない作品です。ネタバレあり。
―2006年公開 米 101分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:自殺予告をする謎に満ちた青年、彼を救おうと必死になる精神科医、精神科医の恋人で不安定な精神状態の女性を中心に現実が奇妙に歪みだす心理スリラー。監督は「ネバーランド」のマーク・フォースター。脚本は「25時」のデイヴィッド・ベニオフ。出演は「スター・ウォーズ」シリーズのユアン・マクレガー、「キング・コング」のナオミ・ワッツ、「きみに読む物語」のライアン・ゴズリング。(KINENOTE)
あらすじ:精神科医のサム(ユアン・マクレガー)は、謎に満ちた若い男性患者ヘンリー(ライアン・ゴズリング)を担当することになる。彼は、自分の誕生日に自殺するとサムに予告する。画家であり、サムと同棲しているライラ(ナオミ・ワッツ)はサムの元患者でかつて自殺未遂をおこしている。ライラの不安定な精神状態はサムの精神的負荷でもあり、彼女を愛していて結婚指輪も買っているのに、渡せないままずっと握り締めていた。そして、ヘンリーが憧れている画家が、18歳の時にあと3年生きると言い残し、自分の作品を全部焼いて自殺した話をサムにする。サムが盲目のレオン博士(ボブ・ホスキンス)と会っている時に、ふいにヘンリーが現れる。博士を見たヘンリーは、博士が自分のせいで亡くなった父親だと主張するが、博士には子供がいなかった。その日を最後にヘンリーは行方不明になる。サムが彼のアパートを訪ねると、壁一面に「Forgive Me(許してくれ)」と書かれていた。ヘンリーの精神状態が尋常でないことが分かり、サムの不安はますます広がる。そこから、サムの身に不可解なことが起こり始める。ヘンリーの母親に会うが彼女はすでに他界していることがわかり、ヘンリーの恋人を訪ねた後、螺旋階段を踏み 外しどこまでも落ちていく…と思いきや、再びヘンリーの恋人の前でさっきと同じセリフが聞こえてくる。教えても らった本屋には、ヘンリーが描いたという絵が飾ってあった。ブルックリン橋の絵。それは、サムのオフィスと自宅 に飾ってあるライラが描いた絵と同じだった。サムはもはやヘンリーの潜在意識の迷路から抜け出せなくなっていた 。サムはヘンリーに誘われるように、ブルックリン橋へと向かう……。(KINENOTE)
監督:マーク・フォスター
主演:ユアン・マクレガー/ナオミ・ワッツ/ライアン・ゴズリング
ネタバレ感想
繰り返し観ると、さらに味わい深そうな作品
たぶんこの作品は、2回目以降の鑑賞でより味わいが深まりそうだ。だから、描かれた内容の細部が気になったり、映像的な見事さが琴線に触れた人は、再鑑賞するであろう映画だと思う。
冒頭にも触れたように、この映画のいいところは結末でこの作品がどんな内容だったのかがわかるようになっているところだ。解釈の仕方としてはいくつかありそうだけど、個人的にはライアン・ゴズリング演じるヘンリーが、事故死する直前に自分の様々な願望が入り混じった夢のようなものを見ていたのだろうと解釈した。
つまり、ラストにいたるまでのいろいろは、事故を起こした直後、サム(ユアン・マクレガー)とライラ(ナオミ・ワッツ)に見取られていたヘンリーの見た幻想みたいなもんだったんだろう。で、その幻想の中に、ヘンリーの恋人に対する思いや、まさに命が消えようとしている自分を助けてほしいという願望や、その他、他者へのいろいろな贖罪の気持ちが入り混じった夢=幻想=心象世界を鑑賞者は見せられていたんだと俺は解釈する。
”どれ”が現実かなんて、誰にもわからない
個人的にこの作品で面白いと思ったのは、ヘンリーが始めてサムと会ったとき(幻想の中で)の、耳に聞こえたものをそのまま記述しろとサムに言われるくだり。その中でヘンリーはいろいろあって、「どれが現実かわからない」的な返信をする。
あのセリフは、そのままの意味で解釈しても、あのシーンの中では何の違和感もない。そして、拡大解釈をするとあのセリフそのものが、この作品で起こる出来事の全てをあらわしているとも言えるし、ラストの展開だって、それに当てはまると言えるだろう。さらには作品を鑑賞した俺の現実に対しても、その言は当てはまると考えうる。
結局のところ、自分の信じているリアルはもちろんリアルな世界ではあるが、”どれ”が本当の現実かなんて誰にも分からないし、どれが現実だって別に問題はないといえばないのである。
コメント