AKIRA
―1988年製作 日 124分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:近未来の東京を舞台に超能力者や暴走族、軍隊、ゲリラたちの戦いを描くアニメ。大友克洋原作の同名漫画の映画化で、脚本は大友と「スケバン刑事 風間三姉妹の逆襲」の橋本以蔵が共同で執筆。監督は「迷宮物語」の大友克洋、撮影は「ダーティペア」「オバケのQ太郎 とびだせ! 1/100大作戦」の三沢勝治がそれぞれ担当。(KINENOTE)
あらすじ:1988年7月、東京で核爆発が発生、第3次世界大戦が勃発した。2019年、ネオ東京では軍の指揮下で新兵器・超能力の研究が進められていた。キヨコ(25号)、タカシ(26号)、マサル(27号)ら永久幼年者はエスパーの実験体で、もう一人のアキラと呼ばれる28号は超能力があまりに強大でコントロールできないためカプセルの中で眠らされていた。職業訓練校生の鉄雄は友人の金田らとバイクで走っていたところタカシと遭遇。避けようとしたが、転倒して重傷を負ってしまう。そして鉄雄はタカシと共に軍に連れ去られ、エスパーとしての訓練を受けた。やがて鉄雄は恐るべきパワーを身につけ、周囲を破壊していく。自分にも軍にもコントロールできないのだ。その力はアキラにも匹敵し、またアキラを目醒めさせる危険も出てきた。金田はゲリラのケイと手結んで鉄雄を止めようとするが、どうにもならなかった。軍の施設を抜け出し、アキラの眠るオリンピック会場建設場へ進む鉄雄を、軍やゲリラ、金田らが追う。鉄雄はついにアキラのカプセルを壊すが、アキラの正体はバラバラに保管された脳神経だった。キヨコ、タカシ、マサルは3人の力を合せてアキラを甦らせ、鉄雄を全く別の宇宙へと連れ去るのだった。(KINENOTE)
監督・原作:大友克洋
出演(声):岩田光央(金田)/佐々木望(鉄雄)/玄田哲章(竜)
ネタバレ感想
漫画原作を圧縮したストーリー
『AKIRA』の原作は全6巻の壮大なストーリーで、今回紹介する映画のほうは、漫画が完結する前に公開された。原作は上映後、数年を経て完結。6巻分を2時間に縮小したのが、映画だと思ってくれても良い。
ただ、あの話はやはり二時間で収めきれなかったようで、アキラの扱いかたとか、けっこう違っている。俺はこの作品、アニメ映画の中では最も好きな作品の一つ。とにかく何度観たか知れない。上映当時は小学生で、この絵に馴染みがもてなかったし、なんかおっかなそうな映画に思えて、観たいとも思っていなかったけど、CMの予告編だけが妙に印象に残っていた。
で、高校生のときにBSで放映されたのを録画してそれを見た時に、一気に引き込まれた。すぐ漫画を買い揃えた。
バイオレンスな青春物語
この作品って、正直わけが分からない部分が多い。少なくとも俺は、初見ではまったく理解できなかった。その後、漫画でその部分を補うことはできたが、それでもやっぱりよくわからなかった。
しかし、繰り返し見ていくうちに、少しずつ、自分なりにはあの物語を解釈できるようになってきた。なので、以下は個人的解釈。
まず簡単なことから触れると、この物語、主人公の少年、金田と、鉄雄の間にある友情が描かれていると思われる。そこにケイという少女、そして、甲斐、山形、カオリなどといった人物が絡む、バイオレンスな青春物語となっている。
金田は実に漫画の主人公らしい主人公で、超人的な体力、運の良さ、優しさ、ユーモア、リーダーシップなどがあり、しかもけっこうドジ。典型的主人公タイプのキャラだ。人望があって、魅力がある。
そしてその友人、物語で重要な役を担う鉄雄は実に暗い生い立ち……(これは金田もそうなんだけど)を持っていて、劣等感の塊りみたいなとこがある。そのため虚勢を張ったり、強くなりたいと願ったり、まあとにかく、屈折しているというか、少年漫画的には主人公にはなりえないタイプの人物。
金田は金田なりの良さがあるが、観る人によっては、感情移入しやすいのは、鉄雄である。金田は何でもできちゃうからな。
人間はみんな超能力者
とにかく、全ての人間には、潜在的に超能力がある、と言っているように思われる。それは生命の進化の流れとして当然なのであると。
作品においては、超能力への覚醒は人為的な力によって行われ、人為的に覚醒させられた人間が、鉄雄であり、アキラであるわけだが、鉄雄は人格が残っているために、暴走しつつある力を自分で制御しきれなくなってしまう。アキラは違う。彼は過去の覚醒時に、人格を飛ばしてしまっている。要するに、力だけの器になってしまっているのだ。
「鉄雄にはまだ早すぎた」と言われるのは、人格があったこと。アキラは人格を飛ばしたため、力に翻弄されることがないが、鉄雄はそれなりに成長した後の覚醒であったために、人格の影響が、人間的部分が強すぎたんである。
進化の流れは、確実にその方向(超能力者への覚醒)に、進んでいるらしい。しかし、その力を上手にコントロールできる人間でなければ、また、アキラや鉄雄のような存在が生まれてしまう。そうではない人間が生まれてほしい。その兆しとなる存在が、ケイなのである。彼女は人為的にではなく、進化の流れにいる自然の中の生命体としてその能力の一端を示した。
アキラは創造主だ
アキラは人為的に創られた、すべてを無にする破壊神なのである。しかし、その力は新たな宇宙を生むこともできるため、創造主でもある。だから、大覚アキラ様として崇められている。それは神であり宇宙だ。宇宙を創造し、破壊する力なのだ。
アキラが力を解放すると、一つの宇宙が誕生する。その誕生の力によって、街は破壊され、全ては飲み込まれていく。それが縮小すると光の粒となって霧消、次元を飛ばして違う宇宙が創られるのである。
ラストの鉄雄のつぶやき
物語最後に「ぼくは……鉄雄」と意味不明な呟きで終わってしまうのは、縮小された光の粒の世界では、また鉄雄が生まれ、作品の世界と同じような物語が繰り返される宇宙があることを示唆しているのではないか。
では、金田が戻ってきた世界の未来はどうなるのか。漫画のほうでは、アキラ、鉄雄ほどの力ではないにせよ、マサル、タカシレベルには人間の進化は始まっていると、世代を重ねるうちに、そのくらいの能力は得られるだろうと、そんな感じの描写がある。
その未来と言うのは、長い生命の、進化の歴史の中で、その流れに流されるままでいた生命たちが、自らの意思で選択可能な、そんな進化もできるはずだと示唆される。
そして、一応現時点では進化の頂点、万物の霊長である人間の次に進むべき進化の道は、超能力により、言葉を超越したところ、人間同士が本当の、心の底からのつながりをもてる、そんな生命に進化するだろうという想像ができる。
――というのはうろ覚えの漫画の情報も含めて自己流の解釈なので、あまり鵜呑みにしないほうがよろしいかと。ともかく、俺はそういう風に観たという感想です。
まぁともかく、実に面白い映画だ。大友監督は「言葉では表現できないことを表現したかった」とかコメントしていたらしい。なるほどそういう作品と言われればそうだ。言葉では言えないことを表現するのがアートだとするなら、ある意味ではアートな域にある作品なのかもしれない。
大友克洋と言えば、AKIRA
大友克洋氏は漫画家で、最近は描いているのか知らないけど、この映画の原作となる『AKIRA』の前に『童夢』という漫画を描いてて、これも超能力使う作品で、けっこう有名。
大友氏が関わったアニメ映画には総監修を務めた『スプリガン』がある。漫画の原作は違う人で、映画のほうはあまり記憶に残っている人いないかも。俺は原作大好きだったので楽しみにしてたけど、内容は普通だったな。
あとは、オムニバスアニメ作品の『メモリーズ』。4作あるお話の中では、「大砲の街」という最後の短い物語が個人的には一番好きで、これは大友氏が監督を務めたらしい。あとは『スチームボーイ』とか。他にも実写映画も撮っていたはず。まぁでも、大友克洋と言えばやっぱり『AKIRA』だ。最近、ハリウッドで実写化される話がとん挫したという報道があったけど、まぁそれはそれでいいと思う。
劇中の音楽が素晴らしい
俺にとって、初見時の一番の衝撃は、この映画で流れる音楽だった。初めて観た時、エンドロールで使われている音楽がいつまでも耳に残った。「らっせ~ら、らっせ~ら♪」って声がとにかく耳から離れない。「かねだ~ てつお~ かい、やま~がた~♪」と。
とにかくわけわからん曲なのに、凄くイイ。だから、漫画よりも先に実はサントラを買った。そしたらそのサントラがまた凄い。とにかく凄い。音楽を手がけたのは芸能山城組とかいう集団らしく、そのサントラの中の一曲は、俺の生涯、人生の音楽ベスト100には残りつづけるであろう一曲だ。
2019年、東京オリンピックの前年が舞台
そして、あの世界観、ネオ・TOKYOの世界観が実に殺伐としていて、いい。『ブレードランナー』で描写された、東洋と西洋が入り混じったメチャクチャな、現実の香港に近いような感じのあの世界観、あれに似ている。
舞台が2019年てことで、しかも翌年にオリンピックを控えているなんて、リアルな世界と同じじゃん。街の風景や科学技術は本作で描かれるほどには進歩してないけども、先の希望がない退廃した感じなんかは、けっこう今の日本に通じるところもある。
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