AI崩壊
―2020年公開 日 131分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「22年目の告白 ―私が殺人犯です―」の入江悠監督が、AIの暴走を描いたサスペンス。AIが生活に不可欠になった2030年、医療AIのぞみが突如暴走し、命の選別と殺戮を開始。AIテロの容疑をかけられた開発者の桐生は、AI監視網の中、決死の逃亡劇を繰り広げる。逃亡する天才科学者・桐生を「キングダム」の大沢たかおが、彼を追う天才捜査官・桜庭をEXILE/三代目JSOULBROTHERSの岩田剛典が、AI管理者を「森山中教習所」の賀来賢人が演じる。(KINENOTE)
あらすじ:2030年。AIが全国民の個人情報や健康を完全に管理し、生活に欠かせぬインフラとなっていた。医療AIのぞみの開発者・桐生浩介(大沢たかお)は、その功績が認められ、娘を連れ立って日本に久々に帰国した彼は英雄のように扱われた。しかし突如のぞみが暴走し、人間の生きる価値を選別し、殺戮を始める。警察庁の天才捜査官・桜庭(岩田剛典)は、開発者の桐生をAIを暴走させたテロリストと断定。警察は日本中に張り巡らされたAI監視網で、逃亡する桐生を追い詰めていく。桐生の亡き妻でAI共同開発者である望(松嶋菜々子)の弟で、桐生が開発したAIを管理していた西村(賀来賢人)も奔走。一方、所轄のベテラン刑事・合田(三浦友和)と捜査一課の新米刑事・奥瀬(広瀬アリス)は足を使った捜査で桐生を追う。日本中がパニックに陥る中、テロ容疑をかけられた桐生は決死の逃亡劇を繰り広げていく。(KINENOTE)
監督・脚本: 入江悠
出演:大沢たかお/賀来賢人/広瀬アリス/岩田剛典/髙嶋政宏/玉城ティナ/余貴美子/松嶋菜々子/三浦友和
ネタバレ感想
近未来、ITとAIを活用した生活が不可欠になった世の中で、日本だけでなく世界崩壊の危機を予見した作品。フィクションではあるものの、10年後の世界は恐らくこうなっているだろうということが感じられる作品だ。
で、内容は家族愛みたいなんを描いた内容なので、大味な娯楽作品という印象は否めない。父と娘、そして亡き奥さんとのエピソードなんて本当にありがちな内容でさして胸に来るものもない。
物語展開も、腐るほど映画を観ているせいか、黒幕が誰なのかは総理大臣の死因を知った時点でわかっちゃうし、その辺にも驚きはない。そして、その予想を裏切ることもなく劇終を迎える。
と考えるとこの映画の何がいいのかと考えるに、啓蒙作品なところだ。テクノロジーの恩恵を受けながら生きている人類のいきつく先の世界がどういうディストピアになるかという。それを知らせてくれるのは警察の桜庭という男が逮捕された後に述べるセリフにある。世の中は確実にAIを利用することで崩壊に向かっていて、それは現在進行形で行われており、それを止めることはできないという。
人類全体の倫理感や良識がまともであれば、科学技術をうまく使うことで幸福をうむことはできるだろう。しかし、これまでの歴史を踏まえるにそうした技術は常に、人を不幸にもしてきた。それでも人類は滅びずに生きながらえてきたが、ある意味でAIは核よりも危険なものなのである。人類は人為的に、AIを用いて自らの種を進化させようとしているのだとしたら、AIの暴走を止める必要はないという考え方もできる。その選択こそが、進化への道ということに他ならないので。この段落の文章の後半部分は俺の意見が大分入ってしまっているが、この映画のテーマはそこにしかないように感じる。
桜庭のそのセリフシーンのあとの主人公の桐生と記者の質疑応答などは、何の答えにもなってない蛇足としか思えない。どういう内容かというと確か、記者は「それでもあなたはAIが人を幸せにすると思いますか」というもの。
それに対して桐生は、考えとくーーと述べて、その後に自分の娘にこう言う「それは親が子どもを愛せるかという質問に変えられるね」と。うろ覚えなんだけど、そういう感じのものだった。わからんくもないけど、なんともはぐらかされた感じ。
そういえば、一つだけどうしてもツッコミたいのは、貨物船から逃れた桐生が助けられた漁師になんもお礼を言わないこと。あれ、だめでしょ。あそこで感謝の気持ちを言えない奴が、どんなに子どもを愛してたって、それは子どもに対する愛でしかなくて他者をないがしろにしてる奴に見えてしまうんだけど。まぁでも、観て損はないと思います。
コメント