イントゥ・ザ・シー
―2014年製作 米 99分―
解説・スタッフとキャスト
解説:大海原に放り出されたパイロットたちの死闘を描いたサバイバルパニック。「ハリー・ポッター」シリーズのトム・フェルトン主演。(KINENOTE)
監督・脚本:ブライアン・フォーク
出演:トム・フェルトン/ギャレット・ディラハント/ジェイク・アベル
ネタバレ感想
適当なあらすじ
実話をもとにした物語だそうだ。太平洋戦争に従軍していた爆撃機の乗組員3名が、出動中に母艦と連絡が取れなくなってまい、自分たちの位置が把握できない。燃料もない。機長はやむを得ず部下のトミーとジーンに命令し、不時着して機を捨てることに。
食料やら懐中電灯やらいろいろ持ち出したかったんだけど、途中で無くしたり持ち出せなかったりして、救命ボートに乗った時に確認できた道具はわずか。水も食料もない。果たして3人は無事に生還できるのかーーというのが適当なあらすじ。
遭難パニック作品が好き
こういう災害パニックや遭難パニック系の映画はけっこう好きなので、鑑賞してみた。何で好きなのかっていうと、極限状況で繰り広げられる、人間たちの生死をかけた行動や選択、そこで起きる人間ドラマを見たいからだ。事実を基にしてようがフィクションだろうが、鑑賞者には対岸の火事。好き勝手考えたり、時には文句を言ったりして楽しめるんである(クズ人間)。
で、この作品は生死を賭けた決死の生還劇が拝めるんだけど、内容自体は全体的には地味。登場人物も三人しかいないし、物語が海上からほぼ動くことがないからね。ただ、サメや台風の恐ろしさは非常によく伝わってくるし、ところどころで、こうしたスリリングな展開も楽しめる。
これが実話ってところがすごい
機長とジーンは反目し合うこともあるけども、彼ら3人は基本的には人格的に優れた人間のようで、忍耐力もあるようだ。なので、それぞれが助け合って、生き残りを図る。台風の波でボートから引きずり降ろされて消えちゃった人間も、決死の覚悟で救出してみせる。そうした一つ一つの行動を、当たり前にやってのけるのだ。これはすごいことだ。
さらに、そもそもの漂流の原因が、機長の居眠りによるものだったことが判明するシーン。ジーンとトミー2名に対しての口喧嘩で言いくるめられちゃった機長が、突然、事の発端となった自分の居眠りについて告白するのだ。あの状況で反省の弁を述べ、謝罪するのだ。そんなことしたら火に油を注ぐようなもんで、リンチにあってまうんじゃないかと思ったら、なんと、トミーとジーンはそれを許すのである。
すごい。あんなことできるかね、俺だったら許せるかね。あんまり自信がない(笑)。ともかく、こいつらのすごいのは、誰か2人がくじけていると、残りの一人が新たな活路を見出そうと、前向きな言動をするのだ。バランスよくお互いが励まし合って、何とか死地を乗り切る努力をするのである。諦めないのである。
驚いてしまうのは、この話が実話だということだ。誰一人も脱落することもなく、20日以上も遭難して、彼らは生還している。彼らは決して執拗に相手を責めることをせずに許し、死地から生還することをあきらめない。人格者であり、不屈の精神の持ち主なのである。そして、そういう人たちが本当に存在したってことがすごいのだ。
他の漂流作品をいくつか紹介
余談だが、太平洋を119日間も漂流した男たちの生還を描いた『アバンダンド太平洋ディザスター119日』という映画があるが、あの映画よりも、今作の漂流のほうが過酷に感じた。それは装備品や備蓄品、ヨットとゴムボートの違いなど、環境面による差も大きいだろうけど、20日ちょいで生還できた彼らのほうが、過酷な漂流をしているように感じた。そんなもん撮り方によるリアリティや時代も漂流場所も違う話なんで、比較しても意味はないんだけども、まぁ、そういう作品もあるっていうことを、参考までに。
ちなみに、『アバンダンド』の記事でもまったく同じことを書いたけども、日本人が海を漂流したノンフィクション本に『たった一人の生還―「たか号」漂流二十七日間の闘い』というのがある。1991年、佐野三治という人と、同乗者のヨットクルーたちが海難事故に遭い、仲間を失いながらも奇跡的に一人生還した話だ。この本は本人による手記で、生還後の苦悩なども克明に記されている。俺は10代の頃にこの本を読んで、非常に感銘を受けた。
この人の漂流期間は27日間。他の仲間はみんな亡くなってしまっている。対して本作のクルーは全員が無事生還している。海上で生き残る条件というのは、かなり運にも左右されるんだろうと思わされる。だからこそ奇跡なんだなぁ。
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