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映画 プリジョネイロ ネタバレ感想 ネットフリックス配信作

プリジョネイロ
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プリジョネイロ

ブラジルの田舎で貧しい野良仕事をしてた青年マテウスが、母親と妹を養うためにサンパウロに出稼ぎへ。しかし雇われた廃品処理工場は、労働者を搾取して強制的に働かせる恐ろしい場所だった。一体どうなってしまうのか!? 格差や階層社会の構造的問題を浮き彫りにする恐ろしくも悲しい話。ネタバレあり。

―2021年配信 伯 94分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:昨今の経済的危機の裏側を切り取った「プリジョネイロ」は、権力と団結、そして裏切りに深く切り込んだ手に汗握るサスペンス・スリラーです。アカデミー賞ノミネート経験のあるフェルナンド・メイレレス (「シティ・オブ・ゴッド」) とラミン・バーラニ (「ザ・ホワイトタイガー」) がプロデュースを手がける本作は、ブラジル映画界の新星としての地位を確立したアレクサンドル・モラット (「Sócrates (原題)」) が、脚本と監督の両方を務める2作目となります。(filmarks)

あらすじ:18歳のマテウス (クリスチャン・マリェイロス) は、田舎に住む労働者階級の家族にいい暮らしをさせたいという希望を抱いていました。サンパウロで新しい仕事をすることになったマテウスは、その先に何が待ち受けているか知らぬまま、同郷の少年たちとともに車に乗せられて都会へ出ます。着いた場所で少年たちは廃品処理場で過酷な労働を強いられ、悪質な雇い主ルカ (ロドリゴ・サントロ) にIDカードを取り上げられ、賃金を搾取された上に、そこから逃げ出そうと考えることすらできないほどに脅迫されます。でも、やがてマテウスは知ることになります。そのボスにもボスがいることを。そこから抜け出すために、彼が取るべき道とは…?(filmarks)

監督・脚本:アレクサンドル・モラット
出演:クリスチャン・マリェイロス/ロドリゴ・サントロ

ネタバレ感想

適当なあらすじ

田舎町で暮らすマテウスには父親がいないようで、母と妹と思われる娘2人と、貧しい生活をしている。ある日、知り合いがサンパウロで出稼ぎをする仕事を紹介してくれるらしく、同郷のサムエルら3人と知人の車に乗せられてサンパウロへ。連れていかれたのは廃品回収業者だった。

そこの経営者はルカと言って、最初は愛想よく4人と接していたが、すぐに態度が豹変。マテウスたちは実は、知人に騙されて人身売買の商品としてルカのもとに送られたのであった。実家に前金を渡し、住み込み宿の家賃、まかないの食費などを入れると、借金しか残らない。

マテウスら4人は反発するが、ルカにはボディガードがいて、こいつが強い。しかも、ルカもこいつも銃を持っているのだ。しかも、廃品回収工場の敷地内は牢屋みたいになってて、どこのドアにも鍵がついてて脱出は難しい。

マテウスはそこそこ学があるし賢く、仕事もできる。4人は彼をリーダーに何とか力を合わせて脱出を試みるが、あえなく失敗。しかも、警察に賄賂でも渡してるのか、警官もあてにはならない。脱出なんてしたら家族がどうなるかわかってるのか? と逆に脅される始末であった。

自分たちが知人に売られたことに気付くマテウスらであったが、この先どうするのか。一人は暴力による解決を提案するが、マテウスはそれを制止。仕事量を増やすことで借金を返し、半年でここを出られるように頑張ろうと仲間を説得。ルカと交渉して仕事を増やしてもらうのであった。

そうやって仕事をしていくうちに、マテウスはルカに仕事の能力を認められ、外の仕事も手伝わされるようになっていく。外の仕事は何かというと、外国から連れてきた労働者を、女性だったら売春宿へ、男性は自分たちの工場へ連れてくるという人身売買の仕事であった。

ルカの仕事の鬼畜さに呆然とし、仲間と自分が脱出するため仕方なしに協力するマテウスであったが、その中で求められた仕事をこなしていくので、ルカにどんどんと目をかけられるようになっていく。

仲間はマテウスだけが優遇されていくことで、彼に懐疑的な目を向けるようになっていく。それを知りながらマテウスは、脱出するためだと彼らをなだめるが、その言葉には力はなかった。

マテウスはルカも若いころは自分と同じような境遇にあったという話を聞く。その話を神妙な顔で聞くマテウスは、実家に仕送りを送ってもらうなど、次第に優遇される生活に慣れていき、仲間たちと疎遠になっていく。

一方で、ルカはマテウスを夜の街につれていき、酒を飲ます。そこで楽しく夜遊びをするマテウス。翌日、べろべろになったルカをベッドに寝かしたマテウス。今なら、みんなを連れて脱出できる。もしくは、ルカの拳銃を使って彼を射殺することもできる。

しかしマテウスは一人街に出て食料をテイクアウトすると、それを仲間たちに渡し、日常の仕事をするようにマテウスに命じるのであった。起きてきたルカはその間にあった出来事を知ってか知らずか、満足げにタバコを吸うのであった。

ある日、何者かに呼び出されたルカに連れられて大豪邸を訪れたマテウス。そこはルカを雇っているボスの屋敷であった。ボスは政治家として出馬することにしたので、その選挙活動の管理をルカに任せ、廃品工場には後任の人間を送るという。

ボスの話によると、ルカは忠実かつ有能な部下ということだった。ボスが指笛を鳴らすと必ずそれに反応するくらいに(笑)。ボスの邸宅に暮らす彼の家族たちはみんな幸せそうだ。それを目の当たりにしたマテウスの表情は複雑。

さらにルカは自分の実家にマテウスを連れていく。そこにも暖かい家庭があった。ルカの母親は、今の暮らしはルカのおかげだという。ルカは自分の仕事を全うすることで、自分の家族を幸せにしているのだ。

そんなある日、事件が起こる。マテウスと親しかった同郷のサムエルが脱出を図ったのだ。必至こいて彼を追うマテウス。なんとか追いつくともみ合いになり、サムエルの首を絞めるマテウス。殺してしまいそうになる寸前で我に返ったマテウスは、呆然とサムエルを見下ろすのであった。

これによって、完全に仲間の信頼を失ったマテウス。仕事前にサムエルからタバコをくれと言われたので差し出して火をつけてやると、不意をつかれて右腕にタバコで焼きを入れられてしまった。怒ることもできず、その場を去ることしかできない。

後任の工場責任者がサムエルたちを働かせている中、マテウスはルカに連れられて工場の外へ。車の中で焼き印のついた右腕を見つめるマテウス。それでも彼は、仲間ではなく家族のために、ルカと同じような道を歩んでいくのだろうーーというのが適当なあらすじ。

人身売買ビジネス怖すぎ

ネットフリックスで見つけて鑑賞。ブラジルでは現実に、こうした人身売買的なビジネスがあって、労働者を低賃金で強制的に働かせているような仕組みがあるんだろう。

で、連れてこられるのは、海外や国内の地方で暮らす低賃金の貧しい人たち。彼ら、彼女らは故郷を離れて一生懸命働いて、貧しい生活から脱出しようとしてたのに、まっていたのは奴隷のような生活という。しかも、女性は娼婦として扱われているっぽい。もしくは男とは異なる裁縫などの労働か。

ルカは未来のマテウスの姿か

そうやって低賃金で労働者を働かせているルカも、実は貧乏な出自。彼自体が未来のマテウスの姿を示しているように見える。そう考えると、見えてくるのは他人ではなく自己のため、そして自分の家族のために生きることを選んだ二人の男の悲哀だ。彼らは自らの倫理観や道徳観、仲間への思いを捨てて、自らとその肉親たちのために生きることを選ぶ。

自分のためと、身内のため。仲間なんて知らん

彼らは底辺から脱出して、一つ上の社会的階層を生きているが、もちろんその上には上がいて、それがルカの雇い主だ。この男は恐らく組織犯罪で金を得て、表の社会へ進出しようとしているのだろう。そして、家族のために政界へ出ようとしている。つまり、身内のためだ。この男が政界へ出て何を変革しようとしてるのかはわからんが、おそらく金のためではないか。それが家族のためになるから。

底辺から階層を上げたマテウス。その胸中は

底辺から搾取した労働力で得られた成果物は、その上の階級によって消費される。例えば、マテウスたちが廃品から得た銅線は都市の電線に使われている。そして、サンパウロの都市の描写でわかるように、都市の中にも富裕層と貧困層の格差があることは一目瞭然。さらに、サンパウロのような都市とマテウスが暮らしていたような郊外にも明らかな格差がある。

そこから逃れるために、マテウスは他者を助け、仲間と協力して状況を打開しようとする気持ちと、勇気を捨てる。

なぜならそれは困難だから。実家を人質に取られた状態で、あの工場を脱出することの難しさは理知的なマテウスにはよくわかっていたのだろう。

しかも、ルカにその働きを認められた自分は、欲望を満たす資本主義社会的な生活を味わったことで、快楽の喜びを知ってしまったから。そうした刺激的な生活の楽しみを知ってしまったら、容易には過酷な道を選べなくなってしまう。

かくしてマテウスは、仲間思いな心を閉ざし、家族と自分のために生きる道を選ぶ。ルカのように。しかしそうした生活を、マテウスの良心がこの先ずっと許し続けるのかはわからない。葛藤し続けるのか、開き直るのか、そこまでは描かれずに物語は終わる。

格差と分断を広げる資本主義社会

ということで、なかなか辛い話ですな。自分自身がマテウスになったとしたら、どういう選択をするだろうか、ということも考えさせられる。作品を通じて強烈に浮き彫りになるのは、経済成長を続けるブラジルでも格差が広がり、犯罪が絶えず、人間たちは階層で分断され、都市と地方も分断されているという状況だ。要するにそれは、資本主義社会が行きつくところまで行ったことを示している。

これはブラジルに限った話ではなく、日本も例外ではないし、アメリカや中国でも状況は似たようなもんだ。じゃあ貧しい国はどうなのか。恐らくその貧困国の中にも権力者や富裕層はいるだろうし、そこに格差はあるだろう。

ともかく、マテウスの置かれた境遇は、個人の力ではどうにもならない、社会の構造的な問題なのである。そして、それを解決することは、かなり難しいだろう。

なぜなら、ある程度の力を持った人間は、誰かを助けるためにその力を使うのではなく、自分と自分の身近な人のために使うからだ。もうすこし広く力を使うとしたら、同じような階層の人にだ。そしてその現状は、この国においても起きている。

なんとも救いのない話だが、最近のネットフリック配信作の中では、良作であった。

この作品はネットフリックスで鑑賞できます。

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