スリー・フロム・ヘル
―2020年公開 米 115分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:ロブ・ゾンビ監督のホラー映画「マーダー・ライド・ショー」シリーズ第三弾。刑務所に入れられた殺戮大好きファミリーのファイアフライ一家。死刑を逃れたオーティスとベイビーは、オーティスの腹違いの兄弟フォクシーの協力を得て脱獄し、メキシコを目指す。出演は、シリーズレギュラーのシェリ・ムーン・ゾンビ、ビル・モーズリー、シド・ヘイグ、「ハンニバル・ライジング」のリチャード・ブレイク。シッチェス映画祭ファンタスティック・セレクション2020で上映。(KINENOTE)
あらすじ:殺戮大好き一家のキャプテン・スポールディング(シド・ヘイグ)、オーティス(ビル・モーズリー)、ベイビー(シェリ・ムーン・ゾンビ)の3人は警官隊の銃撃から生き残り、刑務所に入れられてしまう。死刑を逃れたオーティスとベイビーは、オーティスの腹違いの兄弟フォクシー(リチャード・ブレイク)の協力で脱獄。メキシコを目指し、血まみれの逃避行の旅を繰り広げる……。(KINENOTE)
監督・脚本:ロブ・ゾンビ
出演:シェリ・ムーン・ゾンビ/ビル・モーズリー/リチャード・ブレイク/シド・ヘイグ/ダニー・トレホ
ネタバレ感想
暴力殺人家族、ファイアフライ一家の暴走を描いたシリーズ三作目。一作目は鑑賞したことなくて、二作目がかなり面白かったので、三作目があることに驚いて、何とか時間つくって劇場で観てきた。
感想をいろいろ述べると、どうしても二作目にも触れたくなっちゃうので、ここから先は、両方のネタバレを含みますんで、悪しからず。
てなことで、前作のラストで警官隊に迎え撃たれたスポルディングとオーティスとベイビーは車上で笑みを浮かべながら警官隊に向かって突っ込んでいく。当然その後、ハチの巣になってお陀仏になったんだろうと思わせる終わり方だったのに、なんと、3人は手術により全員が一命をとりとめ、生き残るのである。
もちろん、捕まっているから刑務所にぶち込まれているわけだが、ともかく生きているのであるーーこの設定に無理やり感がなくもないが、その辺はおいておこう(笑)。
で、ボスたるスポルディングはいろいろあったものの、死刑に処される。ここでファイアフライ一家の戦力はかなりダウンした印象。正直に言えば、残念な退場であった。
その代わりみたいな感じで登場するのが、オーティスの腹違いの兄弟、フォクシーである。なんとも唐突な登場で、後付け設定満点の胡散臭さは、『男たちの挽歌』シリーズで、マークの弟、ケンが登場するのと同じような印象。とはいえ、オーティスは別にスポルディングの双子ってなわけではないので、俺のたとえは適当とは言えないわけだが(笑)。
まぁともかく、このフォクシーてのは、オーティスたちと比べて、大した前科があるわけでもないらしい。そこはオーティスからもバカにされてる場面がある。とは言え、やっぱり平然と人を殺せちゃう殺人鬼である。で、唐突に現れたこの人が、刑務所にいたオーティスを脱獄させてやったみたい。その辺の詳細シーンがないのでよくわからんが、なんとここで、ダニートレホが登場するのである。
どうやらオーティスと同じ刑務所に収監されていたトレホさん、オーティス脱獄シーンでぶっ殺されてまうのである。かなりダサい死に方。これもまた少し残念。なぜなら、トレホ演じる役柄の名前は知らんが、この人は2作目で、保安官の依頼でファイアフライ一家を生け捕りにした殺し屋のうちの一人だったからだ。すげぇ強者として描かれてたのに、3作目ではその片鱗も見せずに片付けられちゃうし、その死にざまもダサすぎる。悲しい…。
ということで、晴れて娑婆に戻ってきたオーティスは、特に計画もなくフォクシーと人殺しをしながらフラフラしている。で、まだ刑務所に収監されている妹のベイビー救出作戦を決行するのだ。その作戦てのが、刑務所長の家族を人質にとって、所長の権限をつかってベイビーを脱獄させるという、かなり適当なもの(笑)。
しかし、所長は奥さんたちのために、きちんとその命令を実行に移すのである。あれ、所長がどうでもよくなって、奥さんたち見捨てて通報したら終わりだと思うんだが、そうはならない。そんで、オーティスは無事ベイビーと再会を果たし、所長以下を、漏れなく片付けてしまうのである。
ちなみに、このシーンではベイビーが所長の友だちみたいな人の奥さんを惨殺するシーンがあるんだけど、前作の旦那の面の皮被せられて殺される奥さんのシーンと同じく笑える。かなり残虐で酷いシーンなんだけど、真昼間の外で真っ裸の女性が、ナイフ持って笑いながら追ってくるベイビーから逃げ惑っている光景は酷くシュールだ。しかも、見せ場とばかりにスローめに流してくれる(笑)。
で、今作のベイビーてなんだかキャラが変。2作目ではもう少し、コミュニケーションができる人だったように思うんだが、その辺は作中でもオーティスが「ベイビーは変わった」みたいに言ってたので、何かが振り切れて違う世界にいっちゃったんでしょうな。
作品的には彼女が完全に主役である。いちばん存在感がある。特に、最初の登場で、刑務所を歩くシーンは、バッグに「The Wild One」が流れていて、ともかくカッコいい。今作の一番の見どころではないかと思えるくらいのカッコよさであった。あのシーンだけでもまた観たい。
その他ベイビーの見せ場は、メキシコに移ってからの殺し屋軍団とのバトルや、それに絡む小人症みたいな人との恋愛劇っぽいシーンとか、ともかくいろいろあるのだ。
それと比べるとやはりフォクシーは小粒だし、オーティスもなんか普通のオッサン感がなくもない。それだけ、ベイビーが際立っているということなんだが。
ということで、場面をメキシコに移してからクライマックスまでは、この3人がどうやって生き残りを図るのかっていうことに興味をひかれ続けて鑑賞していた。んで、どうなるかというと、メキシコでは、トレホの息子が3人に襲い掛かってくるのである。
父親の仇討だ。彼の率いる組織はメキシコではかなり名の知れた、「黒いサタン(確か)」とかいう殺し屋軍団。どいつもこいつもプロレスラーみたいにでかいし、地元の奴らに言わせると、「目をつけられたら終わり」らしい。確かにこいつらはなかなか強くて、一度はフォクシーとベイビーの生け捕りに成功する。
ところが、このトレホの息子は親父よりも詰めが甘い奴らしく、絶対的に優位な立場にあったのに、小人さんを殺さなかったせいで、形勢逆転してぶっ殺されてまうのである。萎えるわー。もう少し3人を窮地に陥らせてほしかったんだが。てなことで、なんだかよくわからんけども、このラストの展開は銃撃戦ありの、アクション展開で、もはやホラー映画ではない(笑)。
殺し屋軍団を返り討ちにした3人はドヤ顔で立ち尽くして、物語は終わるのであった。なんなんだこれは(笑)。ということで、3作目が必要だったのかどうかすら疑問に感じてしまう内容で、2作目のホラー的嫌さやなんやらのテイストがまったくない別物の映画になってる印象の本作。別に面白くないわけではない。だが、2作目のインパクトを期待してしまうと、かなり物足りないかも。
にしても、この監督は意図的に汚い映像の撮り方をしているんだと思うんだけど、役者の毛穴が見えそうなくらい、ドアップに撮るシーンが非常に多いなと感じた。こういう映し方で、生理的嫌悪感を覚える人もいるんだろうな。確か、ベイビー役は監督の奥さんだったはずだが、自分の奥さんですらキレイに撮ろうとしないところが、まったくもってお見事。
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