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映画 アス ネタバレ感想 敵は我なりバイオレンスホラー

映画 アス
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アス

―2019年公開 米 116分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:『アス』(原題: Us、英: “私たち”の意)は2019年に公開されたアメリカ合衆国のホラー映画である。監督はジョーダン・ピール、主演はルピタ・ニョンゴ、ウィンストン・デューク、エリザベス・モス、ティム・ハイデッカー(英語版)が務めている。自分たちと瓜二つの姿をした集団に遭遇した一家に起こる惨劇を描いている。(wikipedia)

あらすじ:アデレードは夏休みを利用して、夫と2人の子供たちと一緒に幼い頃住んでいたカリフォルニア州サンタクルーズの家を訪問する。彼女は友人一家と落ち合いビーチへ出掛けるが不可解な出来事に見舞われ、過去のトラウマがフラッシュバックする。やがて夜になると、自分たちとうり二つの不気味な4人組が家の前に現れる。(シネマトゥデイ)

監督:ジョーダン・ピール
キャスト:ルピタ・ニョンゴ/ウィンストン・デューク/エリザベス・モス/ティム・ハイデッカー

ネタバレ感想

寓意性を込めた作品

『ゲットアウト』のジョーダン・ピール監督のホラー作品。ホラーと一口に言ってもその内容にはいろいろあって、単にスプラッター描写がえぐいものだったり、シチュエーションや殺人鬼みたいのが斬新な、設定勝負のものだったり、現代社会への寓意みたいなんが込められている内容だったり、そうした要素がすべて中途半端に盛り込まれているものなど、さまざまだ。

例えば、ゾンビ映画で有名なジョージ・A・ロメロ監督なんかは、社会への寓意とか政治的なメッセージが込められていて、その部分を感じ取れなかったとしても、作品そのものが面白かったりするので、だから名監督として評価されているんだと思う。あとパッと思いつくのは『イット・フォローズ』のデヴィッド・ロバート・ミッチェル監督とかもそうだ。

で、今作のジョーダン・ピール監督も作品の根っこにあるのは自身の根源的問題だったり恐怖だったり社会に対するものの見方などを込めているように感じる。『ゲットアウト』観たとき、そう思った。そして今作についてはさらに寓意的な意図を込めているようだ。

具体的にそれが何かというと、貧富の格差の問題てのが一番に感じるところだ。あとはアメリカ社会が抱える差別や移民の問題とか。それぞれの詳細については解説するほどの知識も知能もないし、他に優れた考察をしているサイトがあると思うので、そちらを閲覧することをお勧めしたい。あとは、評論家の町山智浩氏の解説をYouTubeで探すとか。

敵は我なり、血まみれのバイオレンス

ということでネタバレ含めて感想を続けると、ホラーとして怖い話かというとそうでもない。コメディっぽさすら感じるのは『ゲットアウト』と同様だ。特に、白人家族が自分たちのクローンに襲われるシーン。奥さんが息の根止められるくだりで、アレクサみたいな機械の融通の利かなさなんて、皮肉っぽさすら感じる。N.W.Aの『ファックザポリス』が流れるところとかね(笑)。

というように、物語の表面的な部分にはさほど怖さはないのだ。あるとしたら、アデレードの一家の玄関先に、クローンたちが一列になって立ち尽くしているところ。あそこはゾッとする。マジで。ずっとあんな感じの恐ろしさが続くのかと思ったら、速攻でクローンたちに侵入を許しちゃって、そこからはどっちかというと、血まみれのバイオレンスな展開になる。

さらに、アデレード一家のみならず、白人家族にもクローンが現れた段階で、少なくともアメリカ全土にこのクローン騒ぎが伝播しているだろうことがわかる。もう少し規模が小さい話と思っていたら、ゾンビ的にクローンがアメリカを席巻し始める。ここには個人的には驚かされた。

で、アデレード一家は同じ顔をした自分そっくりの存在と闘争を繰り広げ、自己とその家族を守るために暴力的な人間へと変貌していく。そしてクライマックスにおいて、この騒ぎはどういう経緯で発生してきたのかが、アデレードのクローンの口から語られる。その後、クローンを成敗し息子のジャクソンを救出したアデレードは旦那と娘とも無事合流し、ハッピーエンドを迎えるのである。

…であるが、ラストでもうひと捻り。実は、主人公のアデレードが実はクローンで、この騒ぎの元凶となった彼女のクローンだと思われたほうが、1986年に入れ替わられたいた本人だったのである。アデレード本人はそのことにもちろん気付いている。そして、ジャクソンもそれに気付いたようだ(ちなみに、ジャクソンも本人ではなくクローンだった説もあるらしい)。母親が本当の母親ではなかったことを。旦那と娘は気付いていない。

再観賞すれば、伏線の多さがわかるかも

こうして鑑賞し終えてみると、物語の冒頭から最後まで、細部にいろいろの伏線が張り巡らされていて、それがしっかりと回収されていることがわかる。だから、再観賞するといろいろな発見があって、さらにこの作品の深みを楽しめるのかもしれない。

ただ、俺はそれをしたいとは思わなかった。というのも、設定にツッコミ出したらきりがないほどに、この作品には穴も多いのだ。例えばどういう技術でアメリカは人間のクローン化に成功したのかとか、トンネルとか地下にアメリカの人口と同じだけのクローンがいるようには描写的には見えてこないし、そもそもあんな地下でどうやってそれだけの人間が生活できたんだよとか、いろいろある。

まぁでも、この作品はそういうことを描きたかったんではないので、そこを突っ込んでも仕方ない。ちなみに、ドッペルゲンガーものとは言えないけども、『パラドクス』という映画があって、その作品では自分の人生を幸福に生きられているのは、裏の世界で自分と同じ姿かたちをした人間が地獄のような苦行をしているからだ――みたいな展開があって、『アス』を鑑賞し終えて、なぜかその作品のことを思い出した。

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