トゥインクル・トゥインクル・キラー・カーン
ベトナム帰還兵で精神病になっちゃってる兵士たちの療養施設に、海兵隊で精神科医のケーン大佐が着任するが、彼も何だか変な人。施設の人たちと交流するうちに彼自身の秘められた過去が明かされていきーーどんな話になるのかと思ったら、ラストでの治療で一件落着しちゃうぶっ飛んだ作品。ネタバレあり。
―1980年製作 米 118分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:『エクソシスト』の原作・脚本・製作を手掛けたウィリアム・ピーター・ブラッティ自らがメガホンを取った衝撃と感動の人間ドラマ。(KINENOTE)
あらすじ:ベトナム戦争で精神に異常をきたした兵士を治療する療養施設。ある日、その施設に海軍の精神科医、ハドソン・ケーン大佐が着任する。(KINENOTE)
監督・脚本・製作:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
出演:ステイシー・キーチ/スコット・ウィルソン/ジェイソン・ミラー/ジョー・スピネル
ネタバレ感想
U-nextで偶然見つけて鑑賞。たしか、アートディレクターでライターの髙橋ヨシキ氏がラジオの番組で紹介してた記憶がある。であるから興味を持って鑑賞してみたんだが、なんとも変な作品だったなぁ。
序盤から終盤まではけっこう退屈で、ケーン大佐が着任した施設でいろいろな精神病者と関わる姿が描かれるんだけど、彼らの会話が支離滅裂(当たり前ではあるが)で感情移入できる人が一人もいないので、観続けてるのがけっこう苦痛。
しかしまぁそんな中でもわかってくるのは、ケーン大佐も心が病んじゃってるんだなぁということ。彼は自分の兄がベトナムで殺人鬼バリの鬼畜な所業をしてたことをトラウマっぽく話すんだけども、実は兄と言うのは自分のことで、彼は自分の殺人鬼的な所業を悔いていて、罪の意識にさいなまれているうちに、頭がおかしくなっちゃっているんだとわかる。
で、彼の補佐みたいなことをしてた医師が彼の本当の兄で、その兄ちゃんがなんとかケーン大佐を治療してやりたいと思っていたのだ。
施設の中でケーン大佐といろいろやりあってたのが、元宇宙飛行士のカットショーだ。こいつもまぁイカレた人間なわけだが、ケーン大佐のショック療法?によってラストは健常者としての生活ができるようになったことが描かれる。そして一方のケーン大佐は自らの暴力性と向き合い、そして己を殺すことによって、罪を贖うことになったようだ。
話の裏にあるのは戦争によって人生を狂わされてしまった人々の悲哀であり、反戦的なメッセージだろう。そして、キリスト教を軸にした善悪の話などが絡められているように見えた。
とはいえ、贖罪だのなんだのというキリスト教的な話にはあんまり興味が持てないし、善悪の判断を宗教の中に見出すということに俺はナンセンスさしか感じない人間なので、世間でカルト的評価を得ているほどには、この作品の面白味が理解できなかったのである。
だが、カットショーがなぜ宇宙に行かなかったのかという理由については納得。宇宙は孤独だからだ。その中で死ぬかもしれないことに耐えられなかったらしい。わかるなぁ。しかもこれって、地球に生きてようがなんだろうが、誰にでも当てはまることなんである。孤独。
善悪を超えた言葉を獲得するために、みんな人間であることをやめよう。
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