イコライザー2
元CIAエージェントのマッコールの活躍を描いたシリーズ2作目。今回はホームセンターではなくタクシードライバーとして働くマックは、街のゴミどもを懲らしめる自警団のような活動をしている。その日々のなかで、元同僚が殺害されたことを知り、仇をうつべく立ち上がるのであった。ネタバレあり。
―2018年公開 米 121分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:アントワーン・フークア監督×デンゼル・ワシントン主演による「イコライザー」の続編。タクシードライバーとして働く元CIAエージェントのマッコール。ある日、親友で唯一の理解者である元上官スーザンが殺害され、怒りに震えるマッコールは極秘捜査を開始する。前作に続き、メリッサ・レオ、ビル・プルマンが共演するほか、新たに「グレートウォール」のペドロ・パスカルが出演。(KINNOETE)
あらすじ:元CIAトップエージェントのロバート・マッコール(デンゼル・ワシントン)は、タクシードライバーとして真面目に働く日々を送っていた。そんなある日、親友で唯一の理解者でもあるCIA時代の上官スーザン(メリッサ・レオ)が何者かに殺害される。怒りに震えるマッコールは、極秘捜査を開始。しかし、スーザンが死の直前まで手掛けていた任務の真相に近づくにつれ、彼の身にも危険が迫ってくる。その手口から身内であるCIAの関与が浮上。やがてマッコールは、かつての自分と同じ特殊訓練を受けたスペシャリストの仕業であることを掴む……。(KINENOTE)
監督:アントワーン・フークア
出演:デンゼル・ワシントン/ペドロ・パスカル/アシュトン・サンダース/オーソン・ビーン/ビル・プルマン/メリッサ・レオ
ネタバレ感想
自警団マッコール
今作のマッコールは、前作で少女を助けたことで心境の変化でもあったのか、積極的に街のゴミどもをぶちのめす活動をしている。依頼を受けてではなく、自らの判断でゴミ認定した輩どもに制裁を加えているようだ。
そのため、なるべくたくさんの人を救いたいからか、ホームセンターの従業員から袖振り合う縁の多そうなタクシードライバーに転職している。
てなことで、前半はマッコールの日常と、自警団的活動エピソードが幾つか描かれる。日常パートでは絵を学んでいる学生と親しくなり、悪事に手を染めさせようと絡んでくる彼の友人らをブチのめし、まっとうな人生を送るように訴えるのだ。
この学生は前作の少女ほどには悲惨な境遇にはない。だからこそ、マッコールは引き返せない道に入ってしまう前に彼を踏みとどまらせようとするのだ。という意味で、この二人は擬似的な父子のような間柄になっていくのである。
読書家マッコール
マッコールは他にも、姉の行方を捜している老人や、大家(だと思われる)の代わりに壁塗りをしてやるなど、おせっかいとも言えるくらいに人助けをしている。
そこがなんとも意外な感じと言えば意外。やっぱり前作の少女との関わりが、マッコールを変えたんであろうなと思わせる。
彼の変わっていないのは、読書家であることだ。しかもそのチョイスがなかなか文学青年的。
今作では、序盤に『シッダールタ』を読んでいる。この作品はドイツの作家、ヘルマン・ヘッセのものに違いない。ヘッセは『車輪の下』が有名だが、俺はこの『シッダールタ』や『荒野のおおかみ』を、ニートの頃に面白く読んだ。
で、これを読破したらしい後に、マッコールは『失われた時を求めて』を古本屋? へ購入に出かけている。
店員と話しているセリフ内容からして、大分終盤に差し掛かった巻を買ったようだ。この作品はフランスのマルセル・プルーストによるものだ。日本語で読む場合は確か筑摩書房から全10巻で文庫が出ている(今は岩波文庫や集英社、光文社古典新訳でも出てるみたい)。俺はこれまたニートの頃、3巻まで読んだが途中で挫折した(笑)。これを読破しかかっているなんて、すごい読書家だ。
ちなみに、マッコールが前述の学生に対して、読めと推薦していたのは『世界と僕のあいだに』という、近年のベストセラーだ。俺は未読だが、アメリカにおいて黒人として生きることについて述べられた書籍らしい。
なるほど。実に教養が高いでありますね。さすが元CIAで働いてただけはある。
なんて書いていて思ったのは、今作におけるマッコールは街の人々の世話役であり、若者たちに対しては先生であり、弱きを助ける必殺仕事人でもあるということだ。
彼がどうしてそういう生活を望んだのかはわからない。わからないが、やはり、前作における少女との関わりが…て、さっきから同じことばっか言ってるな(笑)。
一度しか殺せないのが残念だ(笑)
ということで、後半部の話に移る。前作でマッコールを助けてくれていた、CIA時代の同僚であるスーザンが何者かに殺されてしまう。
事件直前まで、彼女と一緒に仕事をしていたデイブは、昔マッコールと供に上からの命令を受けては人を抹殺していた人物。
マッコールは彼と接触を図り、スーザン殺しの真相を暴こうとする。するんだけど、このマッコールとデイブが再会するシーンを見て、何となく黒幕の予測がついちゃった人は多いんじゃないかな。
今作に類似した作品をいくつか鑑賞していれば、今作の展開はお約束のパターンみたいなもんだからねぇ。
まさかこの作品でもそれが起こるとは思ってなかったんだけど…そこは残念ポイントだな。
さらに、この黒幕たちがあんまり強くないことにも拍子抜け。マッコールが強すぎるということなんだろうけどね。
いずれにしても、デイブとその仲間たち(マッコールの元仲間でもある)に対してマッコールが宣戦布告するシーンは、本作の中でもっともカッコよく、わくわくするシーンだ。アクションシーンよりも見所だと俺は思った。
今作のマッコールは、ぶちのめすべき相手に対して選択の余地を残し、相手に選ばせてやっていたが、スーザン殺しに関わったやつらに対しては、まったく情けをかけようとしない。
相手に妻子がいようがいまいが関係ないのだ。要するに彼は怒っていたのだ。だからデイブに対して「一度しか殺せないのが残念だ」と言い放つのである。…怖すぎ(笑)。
でまぁ、いろいろあって元奥さんと暮らした土地でデイブたちを迎え撃って、容赦なく全員をぶち殺して仇討ちは終わる。デイブは学生を人質に取ってたが、ほとんど役に立ってなかったな(笑)。
デイブたちは金ほしさに裏家業に手を出してたらしいけど、本業のほうで協力してくれてた人間を殺害するとか続けてたら、遅かれ早かれ自分たちの悪事はバレてたと思うんだけど、その辺はあまり考えなかったのかな。それとも、よっぽどバレない自信があったのか。
前作よりアクションパートが少なく感じたし、ラストバトルも結構あっさりしている感じもあったが、それなりに楽しめる内容ではあった。
殺しの時間を計るほどに几帳面なマッコールは、コップなど道具を動かす動作がテキパキしてて無駄にキレがあってかっこいい。
こうした所作ってデンゼル・ワシントンの動きなのかも。『アメリカン・ギャングスター』でもそんな感じだったから。
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