ザ・ワイルド
―1998年公開 米 115分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:極限状況下におかれた男たちのサバイバルを、サスペンスを織り交ぜ荘厳な自然の風景の中で力強く描いたアクション。監督は「狼たちの街」のリー・タマホリ。製作は「大いなる遺産」のアート・リンソン。製作総指揮は「12モンキーズ」のロイド・フィリップス。脚本は「殺人課」(監督も)「ウワサの真相 ワグ・ザ・ドッグ」のデイヴィッド・マメット。撮影は「ロミオ&ジュリエット」のドナルド・M・マカルパイン。音楽は「エアフォース・ワン」のジェリー・ゴールドスミス。出演は「ケロッグ博士」のアンソニー・ホプキンス、「陪審員」のアレック・ボールドウィン、「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」のエル・マクファーソン、「ブラッド&ワイン」のハロルド・ペリノー、「カジノ」のL・Q・ジョーンズほか。(KINENOTE)
あらすじ:大富豪のチャールズ(アンソニー・ホプキンス)は仲間たちとアラスカ旅行に出掛けた。ファッションモデルをしている若く美しい妻ミッキー(エル・マクファーソン)は仕事も兼ねてカメラマンのロバート(アレック・ボールドウィン)も同行させる。現地の老人スタイルズ(L・Q・ジョーンズ)の山小屋で荘厳な自然の美しさを満喫する一行。スタイルズの友人のインディアンの写真を見たロバートはぜひとも彼をモデルに使いたくなり、インディアンの住む山小屋まで行かないかとチャールズを誘った。ところが彼らを乗せた水上飛行機は渡り鳥の群れに突っ込み墜落、チャールズ、ロバート、カメラ助手のスティーヴ(ハロルド・ペリノー)はなんとか助かったもののパイロットと機体は湖に沈んでしまった。チャールズの博学と冷静な判断を頼りに3人は焚き火をして暖をとりつつ山を下りていく。しかし極限状況下での協力は容易いものではない。ロバートとスティーヴはチャールズの知識に裏打ちされた落ち着きぶりに次第に反感を強めていき、チャールズもまた前からなんとなく感じていたロバートとミッキーが不倫関係にあるのではないかという疑惑が頭から離れなくなっていた。そんな中、獰猛な熊が襲ってきた。なんとか逃げ延びた」3人だが、怪我をしたスティーヴの血の匂いを追ってきた熊は彼を喰い殺す。捜索隊のヘリコプターも彼らの頭上を通り過ぎて行き、ロバートは恐怖と絶望から半狂乱になる。そんな彼を慰めながらチャールズは黙々とサバイバルを続けるのだった。人の肉の味を覚えた熊はふたりを執拗に追いかけてくる。とうとうチャールズは熊に正面から闘いを挑むことにした。ロバートも生き残るために倒木で作った槍を手にする。激しい死闘の末、チャールズは熊を殺す。久しぶりの食料と毛皮で作った防寒具を手にして勝利の喜びを噛みしめるふたりは意気揚々と脱出行を再開した。だがチャールズはひょんなことからロバートとミッキーの不倫の決定的な証拠を発見してしまう。彼の腕時計の裏蓋にミッキーからの愛の言葉が刻まれていたのだ。ロバートは狼狽するチャールズを殺そうとするが、熊捕り用の罠に嵌まって大怪我をする。チャールズは迷いながらもロバートを助け、一緒にカヌーで川を下っていく。ロバートは自分の行いを悔い、ミッキーが本当に愛しているのはチャールズだけだと告げる。捜索隊のヘリがふたりを発見した時、彼は息を引き取った。救出されたチャールズは彼を迎えるミッキーを何も言わずに抱きしめた。(KINENOTE)
監督:リー・タマホリ
出演:アンソニー・ホプキンス/アレック・ボールドウィン
ネタバレ感想
偶然発見して、なんとなくレンタルで鑑賞してみた。90年代の作品とあって、アンソニーホプキンスもまだ若い。とは言え、たぶん60歳は越えていると思われるが。そんなオッサン=チャールズがアラスカの自然の中でサバイバルするサスペンススリラー。
チャールズは金の力で何でもできるくらいの大富豪。どうやって富豪になったのかはわからんが、自家用ジェットを余裕で買えて、アラスカに大勢で旅行に来れるくらいには金を持っている。奥さんは若いモデルで美人だ。当然、金目当てだろうなと鑑賞者は思わずにはいられない。
アラスカの大自然でサバイバルをする相棒となるのはアレックボールドウィン扮するロバート。この人はカメラマンで、ネタバレしちゃうとチャールズの奥さんと不倫している。んで、チャールズをこのアラスカ旅行中にぶっ殺して、金も奪ってまおうと思ってるクズ人間だ。
そのためには、チャールズをアラスカの山中で消す必要があったので、被写体捜しとか何とか言って、奥地に飛行機飛ばしてもらったら、その飛行機が事故って山中に不時着。リチャードとカメラアシスタント含む3人で生き残りをかけたサバイバルが始まるのである。
で、チャールズは序盤のほうで説明があるとおり、博学の男。さまざまな知識を書物から得ていて、この旅行でもサバイバル関連の本を読んでいた。ただし、それらの知識を活用した経験はほとんどない。とは言え知識は荷物にならないので、それらを駆使しつつ、アラスカの死地を脱しようと頑張るのである。
リチャードは博学なだけでなく、ビジネスで成功した経験でもあるのか、常に冷静沈着であるし、思考が前向きである。ロバートとカメラアシスタントは泣き言ばかりだし、何かがうまくいかないと諦めがち。対してリチャードはそうではない。
もちろん、体力的には二人に叶わない部分もあるのか助けてもらうことはありつつも、最終的に頼られているのは彼のほう。ともかく、自分に自信があるようだ。
ロバートはそういうリチャードがいけ好かないようで、殺したい相手だってこともあるので、その仲は険悪。どうやら飛行機が墜落する以前からリチャードはロバートと奥さんの不倫を疑ってて、この旅行で殺されて財産奪われるかもってことまで予測してたらしい。それもあってのサバイバル術の本を読んでいたと考えることもできる。どんな千里眼の持ち主だよーーと思わなくもないが(笑)。
まぁともかく、リチャードは失敗がありつつも、それなりにリーダーシップを発揮しつつ、時には反感買いつつパーティは生き残るために頑張る。のだが、そこへクマさんが登場するのだ。
…おしまいだ。人間は大人のクマさんには勝てません。無理です。ああやって背中向けて逃げることなんてできるんだろうか。どうなんだろうか。しかしまぁ、ともかく3人は何とか逃げおおせるんだけども、血の付着したタオルをそのままにしたせいで(ロバートのアホの仕業)、クマさんのストーキング作戦を許してしまい、カメアシ君は、あわれクマさんの餌になってまうのであった。かわいそう。
生き残ったのは2人。チャールズにしてみればロバートは自分を殺したがっているわけなんだから、実質一人みたいなもんだが、それはそれ。二人は反目してたかと思いつつ、それなりに共闘関係になり、死地を脱しようと協力し合うのである。そして、それなりに気持ちを通じ合わせるように。
ところが、捜索にきたと思われるヘリコが頭上を去って行ってしまったことに大ショックを受けたロバートは腑抜けになってまい、諦めの言葉を喚くように。ところが不屈の男、チャールズは、あろうことかヒグマ先生、クマさんとの直接対決により窮地を脱出しようという無謀な作戦を実行にうつさんとするのである。ストーカーのクマさんを倒せば、ある程度おちつきを持ってハイキングができると考えたらしい。
ところがロバートはそんな勝てそうもない喧嘩はしたくないし、そもそもヘリがいなくなったからもうどうでもよくなってて、鼻水垂らしながら泣きわめくばかり(誇張あり)。そこでチャールズが勇んで見せる「俺は死なねぇ。クマ公をぶち殺して俺が生き残って見せる!」なんでこのオッサンそんなに生命力があるのかは謎だが、これこそがもしかすると、成功者であり富豪である男のメンタリティなのかしらん。と思わせる。
というか、このシーンはなんか、自己啓発的ビジネスセミナーみたいな感じで、チャールズがしきりにロバートの闘志を焚きつけるのである。自分にはできる! というようなセリフを復唱させるとこなんてまさにそれ。そこで俺はこの映画は、90年代のアメリカの成功者の不屈の精神を謳いあげたドラマだと確信したのであった(超適当な感想)。
そんで、ロバートも半ば破れかぶれな気持ちになったのか、手製の罠と槍でクマさんを迎え撃つのであった。こいつらほとんど飲まず食わずなのに、よくそんな気力あるなぁと感心せずにはいられない。
んで、最初の罠作戦は失敗に終わるものの、二人はクマさんの薙ぎ払いパンチを食らってるくせに致命傷には至らず、主にチャールズの攻撃によってクマを退治して見せるのである。すごすぎ。マジ無理だと思うのだが。
で、祝勝会を開いた二人は、腹の中にきっとカメアシ君の遺体が残っているであろうクマさんをさばき、毛皮を着衣にする周到さ。クマさんの肉をたらふく食してから元気に出発するのであった。
そんでいろいろあって、その後、ボブは自業自得ではあるが致命傷を負い、助けのヘリが来たものの命を落とす。ロバートは死ぬ間際に、あんたを殺す計画は俺の一方的なものであるし、奥さんはまだあんたのことを愛してるよ。と言い残して絶命するのであった。合掌。。
生き残ったチャールズは、奥さんや宿の親父やその他大勢が待つ旅の拠点へ凱旋。なんと、奥さんとロバートの不倫はなかったことにして、優しく奥さんの肩を抱いてやるのであった…。ていうかこの奥さんも分かりやすい人で、普通、旦那が帰ってきたら駆け寄って抱き着くぐらいするのがアメリカ映画なのに、そんなことを素振りはみじんもない。やっぱ、ロバートが死んだことがショックなんかなぁと俺は邪推してしまうのであった。
あんだけ過酷なサバイバルだった割には、髭が増えただけで頬がこけないチャールズ達は超人なのかしらん…などと、なんともツッコミどころの多い映画ではあるけども、けっこう楽しめます。
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