スポンティニアス・コンバッション人体自然発火
怒ると体から火が出るようになっちゃった人体自然発火男が、自らの出生の秘密を探っていくと、そこには恐ろしい陰謀があったーーというトビーフーパー監督作品。何とも荒唐無稽な内容を勢いで押しきっちゃうところがスゴイ。ネタバレあり。
―1990年製作 米 97分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:核実験の結果、ある日突然自らの体が燃え上がるという超常現象に見舞われる主人公の姿を描くSF作。製作はジム・ロジャース、監督・原案は「スペースインベーダー」のトビー・フーパー、脚本はフーパーとハワード・ゴールドバーグの共同、撮影はレヴィ・アイザックス、音楽をグレアム・レヴェルが担当。出演はブラッド・ダリフ、シンシア・ベインほか。(KINENOTE)
あらすじ:1955年、ネヴァダ砂漠で行なわれた水爆実験において抗放射線ワクチンを投与され実験台となったジョーンズ夫妻は無事男児を出産した。しかしその手には無気味な丸い腫瘍が…。数日後、夫妻は突然体から火を吹き出し焼死した。実験に参加した科学者チームはそれをワクチンの異常増殖による(SHC)=人体自然発火であると判断したが、なぜかその真実は闇に葬られた。そして34年後、高校教師になっているジョーンズ夫婦の遺児、サム・クレイマー(ブラッド・ダリフ)はある日自分の指先から火が吹き出したのに驚き、ラジオの超心理学者の番組でSHCのことを聞いて電話をかけるが、今度はその電話線を伝わって局の職員が焼死してしまった。恋人のリサ(シンシア・ベイン)に連れられて病院に向かったサムだが、そこには前妻のレイチェルの現在の恋人マーシュ博士(ジョン・サイファー)が待ち受けていて彼に正体不明のワクチンを投与しようとする。しかしそもそもレイチェルからもらったその薬を飲んだことがこうなった原因であることを悟ったサムはあわてて逃げ出し、必死に資料を調べてあの34年前の実験のことを突き止める。そしてその実験に関わった女性科学者から初めて自分の両親についての秘密を聞かされる。そしてその背後にはレイチェルの祖父で今まで恩師のように思っていたルー・オランダー(ウィリアム・プリンス)の経営する会社の姿があることも…。今まで知らされていなかった真実に怒りを爆発させたサムは今や体全体に拡がった炎に包まれながらもオランダーの屋敷に乗り込み、彼と対決するが、彼の口からはさらに衝撃的な事実が…。自らが実は自在に核エネルギーをコントロールする人間兵器として産み出されたこと、そしてリサもまたそのプロジェクトの産物であることを知ったサムの怒りの炎がオランダーを焼きつくすが、その頃リサもまたSHCに襲われようとしていた。サムは残りの力をふりしぼりリサの体の炎を自らの体に吸い取ると静かに息絶えていった。(KINENOTE)
監督:トビー・フーパー
出演:ブラッド・ドゥーリフ/シンシア・ベイン/ジョン・サイファー/ウィリアム・プリンス/メリンダ・ディロン
ネタバレ感想
トビーフーパ―監督のゴジラへのオマージュ
初見は地上波の日曜洋画劇場だったなぁ。懐かしい。あまりにもタイトルにインパクトがありすぎて、内容はサッパリ忘れてたけど、存在だけは忘れることがなかったのを、U-nextで見つけて鑑賞した。
今回記事を投稿するために調べてて初めて知ったのは、監督が『悪魔のいけにえ』のトビーフーパーだったこと。しかも、Wikipediaによると、この作品はゴジラに対するオマージュなんだそうだ。
本多猪四郎監督によるゴジラシリーズを始めとする東宝特撮怪獣映画の大ファンであるフーパーによる本作は、フーパーなりの本多猪四郎作品の初代『ゴジラ』に対するオマージュである。(Wikipediaから一部抜粋)
なるほど。だとすると、主人公のサムは姿を変えたゴジラってことだな。そう考えると理解できることがある。サムは怒りに任せて人を焼死させまくってて、それが自分の能力によるものだと気付いた後も、悔恨の情などを特に見せずに、旧知の仲だろうが何だろうが、躊躇なく燃やしちゃってるところに、人ならぬものを感じたのだ。
つまり、人を殺す殺人鬼が主人公という珍しいパターンの映画だなぁって鑑賞時に思ってたんだが、主人公=ゴジラと考えれば、それも実に納得できるのである。どちらも人類が科学を暴走させた結果としての、犠牲者ってところも共通しているし。
よくわからん部分もある
ラストに向かって暴走しつつあった彼はラストで、恋人であり、自分と同じような犠牲者であるリサに発現した自然発火能力を自分のものとして吸収し、燃え尽きていってしまう。
この唐突に迎えるラストには唖然とした。この作品は展開がスピーディなのはいいけども、主人公が慎重派というよりは暴走野郎なので、彼の動きを追って繰り広げられるノンストップな物語にきちんとついていけないと、よくわかんない状態に陥っちゃう可能性があると思う。
例えば、医者とか博士が何人か出てくるんだが、顔と名前が一致しないうちに話がどんどん進んでいくので、最初のほうで焼死しちゃった学校医が、サムの前妻の恋人であるマーシュ医師と区別つかない人もいるんではなかろうか。
その他、謎めかせておいて謎のままで終わっちゃうシーンもある。一つは、サムの父親の懐中時計を、彼の自動車に置いて行った女性は誰なのか。もう一つは、サムの過去を知る女性、ニーナの話したかったことは何だったのか。
サムは、ニーナに懐中時計の入手先を問われてもサムは答えようともしない。しかも、彼女が「まだ話がある」と言ってるのに、次の目的地に急ぎたくなった彼はニーナの制止を振り切って去っていっちゃう。そのすぐ後にニーナはマーシュに殺されてまうので、懐中時計の謎も、ニーナがサムに何を言いたかったのかも、謎のままなのだ。
ついでに言うと、この作品の黒幕はルーという男で、マーシュ博士もこいつのたくらみに長年加担してたわけだが、ルーはサムとリサをセックスさせて、新しい子どもを産ませようと考えていたのに、マーシュは人体発火能力を持つ人間であるサムとリサの抹殺を目的としてたところもよくわからん。何で目的違うのに対立してないんだよ。
ついでにマーシュがなんでニーナを殺す必要があったのかもイマイチわからん。しかも本当は「10年前に殺しておくはずだった」とか言ってて、10年も放置してたくせに、なぜ今になって殺す必要があったのかについて、説明がない。
荒唐無稽、ぶっ飛んでる話を勢いで押し切る
とか、よくわからん部分はけっこうあるのだが、そこを主人公の暴走行為のみに焦点をあてて押しきっちゃう勢いは、すごいと言えばすごいですな。
そもそも、人体自然発火などという、オカルト的、『月刊ムー』的な超常現象を題材にして物語をつくっちゃうところがイカれてる。しかもそれを、水爆や原発問題に絡めておきつつ、自然発火の原因はある薬の副作用的な扱いにしちゃう荒唐無稽な設定にするとかぶっ飛んでる。
他にも、交霊術みたいなのを使うラジオDJが出てくるところとかも、圧倒的におかしい(笑)。
まぁともかく、自然発火とかいうスゴイけど、よく考えてみれば地味な能力を、細部に穴がありまくるとはいえ、きちんとテーマ性のありそうな物語として構築できちゃってるのは大したもんですな。とは言え、久しぶりに鑑賞してみて、おもしろいとはまったく思わなかったんだけど(笑)。
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