反逆の旅
引退しようとしてた殺し屋が、ある女性に出会ったことと、彼を逮捕するために執拗に追ってくる刑事によってジタバタする話。別に面白くはないけども、懐かしい昭和の風景が味わえるところはいい。ネタバレあり。
―1976年公開 日 92分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:殺し屋を廃業するために、最後の殺しを行なった主人公が、一人の少女を真剣に愛したために、破滅へ向って走ってゆく姿を描くアクション映画。脚本は「ナンバーテンブルース」の長田紀生、潤色は宮川一郎、監督は「やさぐれ刑事」の渡辺祐介、撮影は「撃たれる前に撃て!」の小杉正雄がそれぞれ担当。原作は藤原審爾(「よるべなき男の仕事・殺し」)(KINENOTE)
あらすじ:加倉井浩は、政界ゴロの河村を殺した。彼の殺しは完璧で、今度もまた何の手がかりも残さなかった。彼はマンモス団地に住み、表向きは玩具のデザイナーを職業とする、子供好きな平凡な男であった。加倉井は“殺し”という、神経をすりへらす仕事に少し疲れを感じ、足を洗おうと考えていた。瀬戸内海の小島に土地を買い、そこで余生を送り、一人でひっそり死にたいというのが彼の夢だった。そんな加倉井に、新しい殺しの依頼があった。見えない組織が足利遠枝を通じて指令を送ってくるのだ。遠枝はかつて、加倉井が愛した女であった。彼女の肉体の魔力が彼をこの世界に誘い込んだのだった。今度の殺しの標的は溝口征義という汚職事件の鍵を握る政・財界の黒幕であった。加倉井は、この難しい殺しを最後の仕事にしようと心に決めた。彼は溝口の鉄壁の防御をくずす計画に全力を傾けた。警視庁の八木刑事は、未解決の殺人事件の背後に加倉井がいると直感していた。それはベテラン刑事だけが持つ、一種のカンのようなもので、決定的な証拠をつかむために、執念の捜査をつづけていた。ある日、しのぶと名のる少女が加倉井に接近し、唐突に殺しを依頼してきた。三年前に彼女を犯し、母を自殺に追いやった男が刑期を終える、その男を殺して欲しいというのだ。しのぶは、彼につきまとった。加倉井は溝口殺しのためのデータを揃えて、綿密な計画を実行に移した。彼は、溝口のために破滅した役人の息子で、今はチンピラやくざに身を落としている野上を利用した。計画は成功して、野上との取引きに単身現われた溝口を、加倉井はライフルによる長距離射撃で見事に即死させた。この計画に参加した野上は、即座に溝口の配下に惨殺されて、証人は消滅した。加倉井は遠枝に殺しが完了したことを報告し、この世界から足を洗うことを宣言した。彼女は妖艶な肉体の呪縛力で、加倉井を思いとどまらせようとしたが、それが不可能と知ると冷然と拳銃を発射した。だが、弾は加倉井が抜いていた。遠枝のその行為が加倉井に、組織への憎しみをつき上げた。彼は彼女の首を絞めて殺した。数日後。加倉井は瀬戸内海の小島へ渡った。そこには戦いも恐怖もなく、畑を耕やし、魚を釣る平和な生活があった。しのぶが島へやって来て、共同生活が始まった。ふりそそぐ太陽と潮の匂いの中で、二人の心はしっかり結ばれていった。加倉井は、生まれてはじめて生きたいと思うようになった。一方、刑事の八木は、遠枝殺しに続く加倉井の突然の引っ越しで、容疑に確信を持った。八木は、しのぶと共に小島で暮す加倉井を発見すると、罠を仕掛けた。しのぶを強姦して三年の刑に処せられた男に、二人の居所を教えたのである。男は嫉妬から小島へ渡った。殺し屋の本能を失った加倉井のスキをついて、その男は死神のようにしのぶを殺して、自殺した。しのぶを殺された加倉井は、心の奥底に凍結していた憎悪が湧き上がり、抑えつけていた“殺し”への意志がよみがえった。警察からも組織からも、追求の手は迫っており、今度は逃げ切れないはずだった。だが、彼は安息を捨て、彼自身の殺しのために出発した。(KINENOTE)
監督:渡辺祐介
出演:原田芳雄/高橋洋子/麻生れい子/尾藤イサオ/田中邦衛/志垣太郎
ネタバレ感想
Unextで見つけて鑑賞。最近、原田芳雄の作品をいろいろ探しては観てて、今作もその中の1本。冒頭にも書いたように、話としてはそんなに面白くはない。ないんだけども、昭和の景色や当時の生活などが観られて懐かしい気分になったなぁ。
この作品が世に出たのは、俺が生まれる1年くらい前だったみたい。であるから、今作に出てた子どもたちの生活は俺が体験していたそれに近いのであり、40年以上も前の時代に古臭さを感じつつも、同時代に俺も生きていたんだなぁと思えて感慨深いのである。これは本作に限らず、70年代とか80年代の作品を観てそう思うのであるが。
例えば、日常の生活でいうと、まず大人の男の多くが場所を構わずタバコ吸いまくってるところとか、実際にそうだったからね。副流煙がどうのこうのとか、マジ関係ないから。それが今となっては外でタバコが吸える場所なんてそうはないわけで、40年っていう歳月はいろいろなことを変えてしまうんであるなぁと思わされる。
もちろんスマホどころか携帯電話すらないわけだから、公衆電話が大活躍。これだって20年くらい前にはまだかろうじて稼働してたのに、今じゃあ街で見かけることすら少なくなったもので。
あとは田中邦衛の演じる八木刑事の家庭の描写。奥さんは仕事人間の旦那に子どものこともっと考えてもらいたいと思ってる。それなりに気が強そうで旦那にいろいろ言いはするものの、権力を握っているのは旦那のほうで、八木刑事は仕事に夢中で家庭を優先している感じはあまりない。
で、奥さんのほうは旦那のために飯を用意してやり、おそらく家事をすべてこなしているのであり、育児もしているのである。現代ではこんな生活をしている夫婦はいるんだろうかと思うわけだが、どうなんだろう。
にしても、八木刑事は奥さんが「二人目の子どもが欲しい」というのに返答し「俺は“男らしさ”とか“優しさ”を道端に捨ててきた男だからよぅ」とか言ってのけちゃう始末。そういうことを言っちゃうところに、悪い意味で“男らしさ”を感じちゃったなぁ(笑)。
しかし、こういうセリフが言えちゃうのも、当時の時代背景があったからとも言えるわけで、今と当時のどっちがいいとかそういう話ではなく、ただ単に懐かしさを覚えた。
ということで、原田芳雄目当てで観たものの、彼のキャラクターは俺の生活とはまったく地続き感がない人なので、自然と八木刑事のほうに目が行っちゃったな。ラストは刑事の執念で原田演じる殺し屋を追い詰めたわけだが、いくら彼を逮捕したいからって、ああいう作戦を使うのは実に卑怯でありますな。けしからん。
原田のほうは殺しに飽き飽きしながらも殺しを続けてきて、やっと引退できたところで若い女性を得て生きる希望が出て来たのに、その女性が死んじまったわけだから、自暴自棄。自分を殺すために、死地に向かう決意をして戦いに出向くわけだ。
…という解釈を俺はしたが、よく考えたらあのラスト、戦いを避けて生き延びるべくトンズラこいた様を描いているという見方もできんくはないわな(笑)。そんなことはないとは思いたいが。
ついでに言っておくと、尾藤イサオとその恋人が捨て駒扱いされてて、あれもまた酷いね。気の毒すぎ(笑)。
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