スリ(2000)
原田芳雄が演じるアル中のスリ、海藤が弟子を取って再起を賭ける話。
―2000年公開 日 112分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:アル中のスリと、彼を取り巻く男女の哀しくもおかしい人間模様を描いたドラマ。監督は「浪人街」の黒木和雄。脚本は『ミッドナイトストリート~湾岸ドリフト族』の真辺克彦と堤泰之、黒木監督の共同。撮影を「身も心も」の川上晧市が担当している。主演は「ざわざわ下北沢」の原田芳雄。2000年度キネマ旬報誌ベストテン第7位、主演男優賞及び助演男優賞受賞、芸術文化振興基金助成作品。(KINENOTE)
あらすじ:名うてのハコ師と呼ばれた海藤は、今はアル中で右手が利かなくなり、同居人のレイの世話になっている初老のスリだ。ある日、愛人・芳江の息子である一樹が弟子入りを志願してきた。一樹に技を伝授することで、自らもカムバックを図る海藤は、自分のことを気にかけてくれる鈴子が主催する断酒会にも参加し、やがて勘を取り戻していく。だが、彼は彼に反発して家を飛び出し、今は集団スリのボスとなったレイの兄・アキラに右手を潰されてしまう。そんな海藤の元に、彼がスリを生業にしていることを知り酒を飲んでしまった鈴子が現れた。自分に秘かな想いを寄せていた鈴子の心情を知り、彼女を抱く海藤。しかし翌日、傷の痛みを押さえてスリに出かけた彼は、長年彼を追い続けてきた刑事・矢尾板に“仕事”を目撃されてしまう。(KINENOTE)
監督:黒木和雄
出演:原田芳雄/風吹ジュン/石橋蓮司/香川照之/川島郭志
ネタバレ感想
何となく原田芳雄が観たくて鑑賞。かっこいいオッサンである。脇を固める風吹ジュンもなかなか美人だし、石橋蓮司もいいし、若い頃の香川照之も出てる。さらに柏原崇の兄弟と思われる男もでている。ついでに笑えるのは、海藤が世話してやってた兄妹のうちの兄貴のほうを、元ボクシング世界チャンピオンの川島が演じているところ。
演技できんのかよとハラハラしてたら、それなりにまともで笑った。でも、今の彼は役者で生きてはいないので、役者としては大して評価されなかったということだろうか(笑)。
てなわけで、アル中の奴らがたくさん出てくる作品。なんかムダに長くて間延びして感じる描写が多いのはなぜか。意図的にやってるんだろうけど、特段情緒を感じるわけでもなく、むしろ冗長に感じてしまうシーンが散見された。例えば、やたらと長いことセリフなしで焚火の描写をしてみたり。
海藤は廃ビルみたいなところに住んでいる。「ビルの管理人」と称していたので、自分の持ちビルなんだろうか? よくわからん。でも、屋上があるしなかなかイイ住処だなとは思った。しかしまぁ、話自体は全然面白くないんだよなぁ。海藤を取り巻く周囲の人たちもそれなりに描写された、群像劇みたいな感じなんだけど、どの人物も、申し訳程度には背景が描かれてはいるだけで、各人に起こる出来事が何とも中途半端な印象。
海藤は弟子を取ることでアルコール依存症から脱して、最後はスリができるまでに回復するものの、石橋蓮司が演じる刑事にお縄を頂戴しちゃったみたいだが、何だったんだろうか、この映画。海藤が酒に溺れた生活から脱してまで、ハコ師としてのプライドを取り戻すという内容が描きたかったんだろうとは思う。
だからわざわざ、ビル内に謎の「メメントモリ(死を想え)」と題した絵画の個展みたいなのを見に行く描写があるんだと思う。海藤は、自分も死にゆく存在であることを自覚し、死が訪れるまでに、自分の栄光の瞬間を取り戻すべく、ハコ師として最後の仕事をしたかったんだろうと思われる。そして、そこまでの再起を描きたかったと。
でも、そうだとしたら彼の周囲の人間たちの描写はさほど必要がなかった気もしなくもない。ということで、何とも中途半端に感じる作品であった。ちなみに、原田と石橋のスリと刑事の関係は、手塚治虫の漫画、『ブラックジャック』に出てくるエピソード、「山手線の哲」のスリと刑事の関係に似ていた。
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