奴隷の島、消えた人々
―2017年公開 韓 88分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:2014年、韓国全土を震撼させた新安塩田奴隷事件にインスパイアされた社会派ドラマ。天然塩の生産で有名な離島で大量殺人事件が発生。さらにそこでは、知的障害者たちが奴隷のように働かされていた事実が明らかになる。事件の裏に隠された真実とは……?出演は「チェイサー」のパク・ヒョジュ、「インサイダーズ 内部者たち」のペ・ソンウ。(KINENOTE)
あらすじ:天然塩の生産で有名な離島で大量殺人事件が発生。そのニュースが韓国全土を駆け巡る。さらに国中を震撼させたのは、塩を生産するための塩田や関連施設で、違法な人身売買によって連れて来られた知的障害者たちが、奴隷のように働かされていたという事実だった。“塩田奴隷”の噂をいち早く聞きつけ、事件前から取材のために島を訪れていたテレビ局記者のヘリは意識不明の重体。後輩カメラマンのソクフンは無残な姿で殺害されていた。果たして彼女たちは、取材中に何を目撃したのか?この残忍な事件を引き起こしたのは一体誰なのか?行方不明になっていた取材テープが発見された時、驚愕の真実が明らかになる……。(KINENOTE)
監督・脚本:イ・ジスン
出演:パク・ヒョジュ/ペ・ソンウ/イ・ヒョヌク/リュ・ジュンヨル
ネタバレ感想
事件のインパクトが薄れちゃっている
2014年に韓国で実際に起きた新安塩田奴隷労働事件を題材にして創作された物語。リアルな事件のほうがかなりエグイので、作品内で描かれる内容もけっこう悲惨なんだけども、韓国映画特有の人間の嫌さを深く見せつけてくる力がない残念作品。
韓国映画の面白い作品って、事実を基にしてようが、創作だろうが、人間の悪意ある行動をこれでもかってくらい見せつけてくる内容のものが結構多い。この作品もその類の内容を目指したように思うんだけども、残念ながら、題材になって事件のインパクトを十分に活かしきれていないと感じた。あまり面白くなかったのである。
取材班がボンクラ
どうして面白くなかったのかを考えた。おそらく、島に入ってきて取材を行う記者とカメラマンの行動がバカっぽいことが一因だ。
特に記者のほうは正義感があるのはわかるんだけども、あまりにも取材手法が特攻野郎すぎて、あきれる。アポなしは仕方ないにしても、無断で敷地に入りこむような奴の取材を受けたいと思うわけないじゃん。悪を暴きたい気持ちがあるんなら、もう少し段階を踏むとか冷静に計画を立てるとか、アプローチのしようはあると思うんだけど。あんなやり方するなら、最初からどっかに隠れて現場を隠し撮りしてたほうがよっぽどよかったように思う。
あと、島を管轄地域にしている警察のオッサンの捜査する気のなさは最初から分かりきっているのに、彼に捜査を頼んじゃうところ。どうして悪徳業者とつながっているんじゃないかと想像しないのか、理解に苦しむ。
そんなこんなで結局、カメラマンは殺されてまうし、記者自身も重症を追う。何で記者は生き残れたのかが謎で、そこもまた不満だ。犯人はなぜカメラマンを殺した後、記者の息の根を止めに戻らなかったのか。
どんでん返し的なオチを見せたかっただけ!?
あと、悪徳業者以外の島民が、業者の輩たちをどう思っているのかよくわからない。関係性がちゃんと描けていないように見える。だから、島民も悪徳業者の息がかかっているように見えなくもないし、そうでもないように思えて、しかし、それがラストまで説明されない。島民の数が少ないし、強制労働させられている障がい者の数も少ない。それなりに大きな島だと思うんだが、作品から感じる箱庭的違和感は、予算の問題だろうか。
さらにさらに、実際の事件を元に創作した展開が、この作品をかなり残念なことにしてしまっていると思う。なんと、強制労働させられていた知的障がい者の中に、障害があるふりをして、身を隠していた連続殺人鬼がいたというオチ。
なるほど、そういうことがしたかったのかと関心しなくもなかったが、考えてみれば変だ。なぜ障がい者のふりしてまで身を隠していたかというと、おそらく捕まりたくなかったからだろう。だからといって、何年もの間、奴隷みたくコキ使われ、拷問に近い体罰までされるくらいなら、捕まって刑務所にいたほうがマシにおもうんだけど。マゾの殺人鬼かよ。
仮に刑務所にいるより自由を感じられるので島にいたほうがいいんだとしても、障がい者のふりして何年もバレずにいるって無理だと思うぞ。拷問されてるときに何かの真似事なんてできないでしょ。そう考えると、障がい者のふりができていると思っているだけで、あの殺人鬼はやっぱり障がい者なんである。きっと。
ともかく、後から事件のことを調べてみるに、こんな展開にしちゃって苦情がこなかったのかと心配しちゃうほどに、元の事件の凄惨さをスポイルしてしまっているように思える、ひどい映画だと思った。
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