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映画 メランコリック ネタバレ感想 銭湯で働く東大卒青年の成長物語

メランコリック
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メランコリック

―2019年公開 日 114分―

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解説とあらすじ・スタッフとキャスト

解説:31回東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門監督賞受賞作。一流大学を卒業後、うだつの上がらぬ生活を送っていた和彦は、たまたま訪れた銭湯で高校の同級生と出会い、そこで働くことになる。だがその銭湯は、閉店後に人を殺す場所として貸し出していた……。主人公・和彦を演じる俳優の皆川暢二の呼びかけにより、アメリカで映画制作を学んだ後、IT業界でサラリーマンをしていた田中征爾監督と、俳優の傍らタクティカル・アーツ・ディレクターとしても活躍する磯崎義知という3人の同級生(1987年生まれ)で立ち上げた映画製作ユニット One Goose(ワングース)による映画製作第一弾作品。(KINENOTE)

あらすじ:一流大学を卒業したものの、その後はアルバイトを転々とする生活を続けている鍋岡和彦(皆川暢二)は、ある夜たまたま訪れた銭湯「松の湯」で高校の同級生・副島百合(吉田芽吹)と出会う。それをきっかけに、和彦は松の湯で働くこととなるが、実はその銭湯が閉店後の深夜、人を殺す場所として貸し出されていることを知る。やがて、同僚の松本晃(磯崎義知)が、殺し屋であることが判明し……(KINENOTE)

監督・脚本:田中征爾
出演:皆川暢二/磯崎義知/吉田芽吹/羽田真/矢田政伸/浜谷康幸/ステファニー・アリエン/大久保裕太/山下ケイジ/新海ひろ子/蒲池貴範

ネタバレ感想

公開前から気になってた作品なので、鑑賞してきた。大してあらすじを調べもせずに物語展開を勝手に予想してた俺は、主人公のニートが銭湯のバイトを始めたことで、バイオレンスかつ自己の内面の闇に触れていく作品だと思っていた。

で、そっこーネタバレすると、俺の期待してたような展開でもあったんだけど、最終的には救いのあるほっこりエピソードで劇終したのである。

その描写にはコメディチックなシーンが散見し、劇場ではいくつかのシーンで笑いも起きていた。コメディ映画だったのかな?

それが個人的にどうだったかと言うと、意表をつかれもしたけど全体的には楽しめたし良かったかな。

この作品は主人公のカズヒコの、成長物語だと理解した。他の見方もあるのかもだけど、俺にはそういうふうに感じられたのである。

東大卒でニートのカズヒコは、さほど裕福ではなさそうだけども貧乏でもない家庭の一人息子として暮らしており、両親は彼に対して無関心ではないものの、深いところまで立ち入ってこようとしない普通な親である。

愛情がないわけでもない。過剰に立ち入らず、かといって心配していないわけでもない、要するに息子に対して理解のある両親だ。

恐らくカズヒコもその距離感を悪く思っていないのであり、だからこそ、常に母親のつくった食卓をこの家族は囲んでいるのである。

カズヒコは、東大出たのに何でそんな生活してるの? と言われるような暮らしをしている。

それは鑑賞している俺もそうであって、カズヒコ当人はそれをどう思っているのか、クライマックス直前の松本との飲みのシーンでそれがさらっと明かされるんだけども、その答えは核心に触れたものではなく答えとして成立していないのだが、カズヒコにとっては、東大を出たこと自体もその程度のことなのかもしれない。

もちろん彼にもプライドはある。あるからこそ、銭湯で再会した高校時代の同級生のユリちゃんに対して、ニートであることは言わない。

言わないけども、彼は正直な人間なので、彼女との付き合いが長くなるにつれ、紆余曲折ありつつも、そのことをきちんと告白する。

そういう意味では、カズヒコという青年は、今的な青年というよりは、なんだか俺が20代の頃の自分を観ているような感覚に陥って、彼の煮え切らないけどもなぜか夜の仕事には熱心になっていく狂気にも、なんとなくシンパシーを感じるところがあった。

彼は勉強ができる男だが、おそらく何もない人間なのだ。何がないというと、野心だ。

平凡でイイと思っているようだ。巻き込まれる事件に対しての彼の無防備さと無頓着さは、松本に指摘されるように警戒心なさすぎで想像力のかけらもない。彼はそういう意味では、現実から外側に足をおいた視点の人間である。そしてやっぱり少し変だ。

そんな彼が、銭湯での仕事を通じて受け身ながらもある部分では積極的に足をつっこみながら社会性を身につけていき、最後はハッピーエンドを迎える。そしてラストのセリフにあるように、彼自身は自分が見つけた人生の生きる意味を、この先も求めつつ生きていくことになるのだろう。

てなわけで、何というか今的な時代性というよりは、一昔前の若者の内面を描いているように、俺には思えた。それは若かった頃の自分に感情移入しているような感覚だろうか。

本作を魅力あるものにしているのは、松本という男の存在だろう。本当にあんな人間いるのかよと思わぬでもないが、彼とカズヒコが少しずつ友人としての絆を結んでいくのが物語を通して伝わってくる。

そしてラストのハッピーエンド。普通なら松本は死んでるはずだろ、と思いはするものの、生きててよかったなぁと思わせる結末であった。

ちなみに、ユリの役はどう考えても童貞男が望みそうな女性像で、その辺はちょっとリアリティがないんだけども、彼女を演じている女優さんが絶妙にはまっていて、実はもっともいそうにもない登場人物なんだけども、それはそれでいいのかなと思わせる力があった。

予想とはまったく異なる作品だったものの、鑑賞してよかった。ただ、カズヒコの東大卒設定があまり活かされてない部分は残念。そこまで秀才に見える描写がないし、あえてそこまでの高学歴にした意味が感じられなかった。

あと、毎週のように銭湯通っている俺にとって違和感あったのは、番台で新品のタオルをくれるところと、洗い場にそなえつけのシャンプーなどがあること。

すくなくとも俺の近所の銭湯では、あのサービスはない。地方の銭湯ではまだあるんだろうか。羨ましい。

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