TUBEチューブ死の脱出
娘を亡くし失意にある女性リサが、いろいろあって目覚めたらヘンテコなチューブ内に閉じこまれていた。何だかわからぬままにトラップをかいくぐりつつ生き延びようとする彼女は、果たして脱出できるのか。なかなか恐ろしい話ではあるが、なんだか物足りないSFスリラー。ネタバレあり。
―2022年公開 仏 91分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:クエンティン・タランティーノ監督やリュック・ベッソン監督の下で助監督を務めた新鋭マチュー・テュリ監督によるSFアクション・スリラー。女が目覚めると暗く狭いチューブの中にいた。迷路のように繋がるチューブには様々なトラップが仕かけられており……。延々と続くチューブの中で死のトラップからの脱出を図る女を、「スクランブル」のガイア・ワイスが演じる。(KINENOTE)
あらすじ:暗く狭いチューブの中で目覚めた女(ガイア・ワイス)は、腕にブレスレットが取り付けられていることに気付く。そのブレスレットには、カウントダウンの表示が光っていた。訳もわからずチューブ内を移動すると、別のチューブに辿り着き、そのチューブはまた別の空間に繋がり、まるで迷路のようだった。天井が下がってきて押しつぶされそうになったり、大量の水や火炎が噴き出してきたりと、各キューブには様々なトラップが仕かけられている上に、タイムリミットが設けられており、考える暇もなく次々と恐怖が彼女を襲う。(KINENOTE)
監督・脚本:マチュー・テュリ
出演:ガイア・ワイス/ペーテル・フランツェーン/ロマーヌ・リベール
ネタバレ感想
特に期待せずに鑑賞。『CUBE』みたいな脱出サスペンスをしたいのかなと思ってたんだが、登場人物が少なく、チューブ内のトラップの謎を解きつつ進んでいくような展開ではなかった。
まぁ、そういう作品を期待するなら『CUBE』を観るわけで、同作の話をTUBE内でやったところで…ってわけだから、同じ話にするわきゃないわな。
じゃあどんな話なのかっていうと、これが何とも抽象的な感じ。リサがTUBE内から脱出するためにジタバタするその展開は、それなりにスリリング。狭いチューブ内でリサが必死こいてヒィハァ移動してる様はなかなかによろしい。こんなシチュエーションに置かれちゃったら、俺だったらマジでショックすぎて怖すぎて何にもできないだろうなぁと思うんだが、彼女はけっこうな頑張り屋でありましたな。
で、このリサという主人公は、娘を亡くしちゃってて自暴自棄という設定。自殺してもいいかなぁと思って人の少ない道路に寝っ転がって自分をひき殺してくれる車を待ってる姿から作品がスタートするのだ。
で、いざ車がやってきたら気が変わって、ヒッチハイカーぶってみたら、リサをひき殺し損ねた車が彼女を拾ってくれる。ドライバーはなかなかいい奴で、リサとも話があいそうな感じで会話が続く。
俺は何らかのトラブルでこの2人がチューブ内に拉致されて、二人で協力して脱出を図るのかなぁと思ってたら、全然違う展開に。なんとこのドライバーは、人殺しをして逃亡中の殺人鬼だったんである。で、カーラジオでその事実を知ったリサはドライバーに襲われちゃう。んで、なぜか目が覚めたらチューブ内に閉じ込められていた…。
という感じに物語が始まる。んで、その後はさっきも書いた通り、リサがチューブ内でジタバタしてて、そんな中で殺人鬼とも再会。いろいろあって脱出方法のヒントを得たリサは、何とか過去のトラウマと向き合いつつ、脱出に成功するのである。
とまぁだいぶ内容を端折って紹介したけども、この作品っていったいなんなんだろうかねぇ。考えてみるに、作品内でリサは生きる希望を失ってて、それでも理不尽なチューブ内で生き残るためにジタバタするわけで、最終的には謎の頭蓋骨機械や娘の幻影とのかかわりを通じて、生き抜くことを決めていく過程が描かれる。
と内容を振り返ってみると、これって生きることを肯定する、どんな人生でも肯定して生き抜くべきーーというような作り手の思いが込められているように感じたのである。要はTUBEってのは人生そのものであり、それが理不尽で不条理なものだということを表すための比喩みたいなものなんではないか。
となると、TUBEってのは神であるかもしれないし、人間よりも上位の存在であると考えることができる。その存在は、リサに試練を与え、それを乗り越えた彼女を救済し、ラストではユートピア的な別の場所に連れて行くのだ。
ということを踏まえるに、リサは殺人鬼の手によってすでに死んでいて、地獄の中で苦行に耐えたのちに救われ、天に召されたのであったーーというように解釈できなくもない。
てなことで、SFスリラー的な設定の中で、その物語に込めたものはなかなか宗教的とでも言えそうな内容の作品であった。と、褒めてるような感想だけども、全体としてはそんなに面白くもないし、俺の勝手な解釈による救済の物語も、実にありきたりと言えばそうであって、何ともヘンテコ作品でありましたな。
にしても、これを観てて思ったのは、リサのジタバタは、昔のファミコンゲームの2D横スクロールアクションのようだなぁってこと。そう考えると、あれらゲームの主人公たちは実に過酷な冒険をしていたんだなぁ。
トラップやら落とし穴やら串刺し針やらなんやら、トラップを避けられなければ死。そしてまた生き返り、延々と目的を果たすために戦い続けなければならない。この作品はまさに、その状況を表現しているという見方もできますな。よく考えてみたら、そんな状況に置かれることってものすごく恐ろしいことだ。
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