薔薇は死んだ
高級娼婦のエルザと元娼婦で彼女の友人でもあるローザ。二人の関係、愛憎劇をカトゥという第三者の目から捉えた作品。
―2015年製作 洪 88分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:第一次世界大戦前夜、ドナウの真珠ブダぺストの凍る河岸に大きなバスケットが流れてきた…最高の娼婦は4日間何をしていたのか?実話歴史サスペンス傑作!
◎2016年ナッシュビル国際映画祭 観客賞・最優秀女優賞・特別審査員賞受賞
◎2016年ティブロン国際映画祭 最優秀作品賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞・最優秀脚本賞・最優秀撮影賞受賞たぐいまれな美貌、高い教養を備え、王侯貴族や資産家の寵愛のもと、巨額の財産を手にし、ときには政治まで動かす、クルチザンヌと呼ばれた高級娼婦。その頂点にあった一人の女性が何者かに殺されてドナウ河を流れてくる。彼女をめぐる4日間の出来事を、綿密な脈本、流麗なカメラ、豪華な美術、圧倒的な女優陣の魅力で描く。昨年のカンヌ映画祭でグランプリを獲得(『サウルの息子』)など、進境著しいハンガリー映画界の実力をいかんなく発揮した、Aクラスのサスペンス! (Amazon)
あらすじ:殺害された高級娼婦をめぐる4日間の出来事を描いた実話に基づく歴史サスペンス。第1次世界大戦前夜、ブダペストの河岸に大きなバスケットが流れ着く。その中には、高級娼婦の頂点にいたエルザ・マグナシュの白いドレスに包まれた遺体があった。(Amazon)
監督:アッティラ・スアース
出演:パトリーシア・コヴァーチ/ドルカ・グリッウス/ラウラ・ドーブローシ/ヤノス・クルカ
ネタバレ感想
エルザとローザは元々親しい仲あったが、今では主従関係という歪な状況にある。それなのに、二人はつかず離れずで生きている。エルザはローザにもう、さほどの関心がないようだ。
いっぽうのローザはエルザに憎しみもありつつ、過去の面影を追っているように見える。彼女たち二人は非常に対照的だ。しかし、ローザも実は、エリザのように生きたかったのだろう。おそらく、マックスをローザに奪われたことで、キリスト教に救いを求めるようになったのだと思われる。自分の道を肯定し、ローザの道を否定したいがために。しかし、それが完全にはできない。できないからこそ、ローザに対する憎しみも募る。それがあのラストの、ローザ殺しにつながる。
カトゥは彼女ら二人の両方の要素を備えている人物として描かれる。では果たして、彼女はどちらの道を選ぶのか。それとも中庸の道をいくのか。彼女にはどちらにも成れる将来がある。そして美貌もある。二人の年上の女性の行く末を見守り、自身もかかわりをもったことで、彼女は自分の未来に対しての選択を冷静にできるようになるのかもしれない。ラスト、エルザの遺品をローザに渡したのは、カトゥのやさしさによるものか。
三人の女性の心の動きや内面の葛藤を静かな描写の中で示してくる、なかなかの良作でした。本当は三人の関係性をもっと詳しく書きたかったけど、かなり奥行きのある内面描写がされているので、筆力が足りないし面倒なのでやめておく。オススメ作品です。
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