刺さった男
失業中の広告マン・ロベルトが、工事現場の鉄骨に頭が刺さっちゃう事故に遭う。彼の行く末を報道すべく群がるマスコミ。ロベルトは自分をダシにして一儲けを画策するのだがーー。ブラックコメディがラストのほうでヒューマンドラマになっていくが、そんなに面白くはない。ネタバレあり。
―2012年製作 西=仏 94分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:「気狂いピエロの決闘」のアレックス・デ・ラ・イグレシア監督によるブラックコメディ。ひょんなことから頭に鉄筋が刺さって動けなくなってしまった男の運命を描く。出演は「フリーダ」のサルマ・ハエック、「抱擁のかけら」のブランカ・ポルティージョ、「気狂いピエロの決闘」のカロリーナ・バング。脚本は「ネゴシエーター」のランディ・フェルドマン。(KINENOTE)
あらすじ:失業中の元宣伝マン、ロベルト(ホセ・モタ)はなかなか就職先が決まらず失意の日々を送っていた。かつて彼がコカコーラのキャッチコピーを生み出したことなど、もう誰も評価していないのだ。そんなある日、古代遺跡の発掘現場に立ち寄ったロベルトは、ひょんなことから工事現場の鉄柱が頭に刺さり動けなくなってしまう。テレビ局や広告代理店、市長らがエゴ剥き出しの狂騒を繰り広げるなか、一夜にして有名人となっていくロベルト。やがて現場に駆け付けた妻(サルマ・ハエック)に、ロベルトは自身の命を懸けた一発逆転の大勝負に出ると訴える……。(KINENOTE)
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア
出演:ホセ・モタ/サルマ・ハエック
ネタバレ感想
U-nextで見つけて鑑賞。主人公のロベルトは金に困っているのに職がないってことなんで、焦って当然だし、広告マンという経験を活かして、事故に遭った自分の境遇を売り物にしようと発想するのはわからなくもない。ないけどやっぱ、イカれてるとも言えますわな(笑)。
そもそもこの作品、博物館の人も市長も医者も広告代理店の人も、ロベルトが職探しの相談に向かった旧知の仲の2名とか、ともかく自分の利益のこと考えている人ばっか。そうでもないのは、ロベルトの奥さんとロベルトの事故に居合わせた警備員くらい。あと、一番マイナーな報道機関で取材をしてる女性もそうか。
そうした人間のエゴが繰り出す喜劇をブラックな笑いにして描いているんだろうなぁと思われる内容であった。しかしまぁ、ロベルトの奥さんと息子・娘がなんだかマトモな人間すぎないか。なぜ奥さんはロベルトをあそこまで愛せたのか、息子と娘もどうして長期間職にあぶれている親父とあんなまともな関係でいられたのかーー。そう考えると、ロベルトは優れた人間性の持ち主だったのかもしれん、事故前までは。
とは言っても、これまでの仕事の実績が「17歳の頃に発案したコーラの広告のコピー」だけってのは(笑)。そりゃ、共同作業扱いされても仕方ないだろうし、現在はそれなりに中年のオッサンになってるんだから、そこに至るまでにもう少し実績あっても良いのでは…。しかし、実績あるなら職を失うなんてことないわけだし、よく考えたら俺自身、これまで社会人やってきて誰かに自慢できる実績なんてなかったので、主人公を笑えるわけではない(笑)。
いずれにせよ、ラストはロベルト死んじまうという、いきなり笑えない展開になって、奥さんがいろいろなものに激しく憤っているような表情のアップで劇終。このシリアスな終わりにはあんまり笑えなかったし、そこに至るまでの展開も、それほど面白いわけでもなかった。
コメント