来る
―2018年公開 日 134分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:第22回日本ホラー小説大賞を受賞した澤村伊智による『ぼぎわんが、来る』を「告白」の中島哲也監督が映画化。幸せな新婚生活を送る田原秀樹の会社に、とある来訪者が現れ、取り次いだ後輩は謎の死を遂げる。それ以降、秀樹の周囲で奇妙な出来事が起こり始める。出演は「散り椿」の岡田准一、「リップヴァンウィンクルの花嫁」の黒木華、「恋は雨上がりのように」の小松菜奈、「小さいおうち」の松たか子、「怒り」の妻夫木聡。脚本を中島哲也と、劇作家の岩井秀人、「渇き。」の門間宣裕が務める(KIENNOTE)
あらすじ:香奈(黒木華)との結婚式を終え、幸せな新婚生活を送る田原秀樹(妻夫木聡)が勤める会社に謎の訪問者が現れる。取り次いだ後輩の伝言は「チサさんの件で」とのことだったが、秀樹の脳裏に疑問がよぎる。チサとは、妊娠した香奈と喜び勇んでつけたばかりの娘・知紗の名で、まだ二人しか知らないはずであった。結局、訪問者の正体はわからぬまま、“それ”と会話した後輩は謎の死を遂げる……。2年後。イクメンパパとして知紗を溺愛する秀樹の周囲で、超常現象としか言いようのない怪異な出来事が相次いで起こり始める。何かに狙われているのではないかと恐れた秀樹は、オカルトライターの野崎(岡田准一)と、霊媒師の血をひくキャバ嬢・真琴(小松菜奈)とともに調査を開始。だが、田原家に憑いている“何か”は想像をはるかに超えた強大なモノだった。民族学者・津田(青木崇高)によると、その“何か”とは、田原家の故郷の民族伝承に由来する化け物ではないかという。そんななか、真琴の姉で、国内最強の霊媒師・琴子(松たか子)の呼びかけで、全国から猛者たちが次々と田原家に集結。かつてない規模の“祓いの儀式”が始まろうとしていた……。(KINENOTE)
監督:中島哲也
原作:澤村伊智(『ぼぎわんが、来る』(角川ホラー文庫刊))
出演:岡田准一/黒木華/小松菜奈/青木崇高/柴田理恵/伊集院光/松たか子/妻夫木聡
ネタバレ感想
原作は未読。公開当時から多少気になってたんだけど、放置し続けているうちに2年も経っていた。今回アマゾンプライムで見つけたので鑑賞。長尺の割には説明しきれてない部分もある気がして、そこが消化不良。別に怖くもないが、妻夫木氏が演じるキャラの糞っぷりには拍手を送りたい(笑)。
この作品は、最初が妻夫木聡が演じる田原秀樹が主人公で、彼があの世に逝ってからはその妻の香奈が主人公になって、彼女があの世に逝ってからは野崎(岡田准一)が主人公になる。前の二人はいろいろあって死ぬことになるが、野崎は死なない。
その辺にはきちんと理由があって、そういう描写もあったように思うが、突き詰めて考えたいほど楽しんだわけでもないので、言及はできない。
俺がこの作品において評価したいのは、善人ぶった面してる一般人が、心の奥ではけっこうゲスなことを考えてて、それを描写しているところ。例えば、香奈と、民俗学者の津田(青木崇高)がそれにあたる。軽く野崎もそうだ。どうやら呪われる奴らには共通して人としてクズな面があるようだが、それは俺も含めどんな人間にもあることなんで、誰にでも、この作品に出てくる「ぼぎわん」に、呪われる可能性はあるんだろうね。
中でも俺が個人的に好きなキャラは、前述の妻夫木演じる田原秀樹だ。イクメンパパブロガーとして周囲からなかなかの評価を得ているし、パパ友だちみたいなんがいるみたいだが、ともかくこいつが、人の話は聞かないわ、自分中心に人生を回してて、それに気付いてもいないという、超幸せ人間であるが故のクズっぷり。
他人からしてみたらウザさしかないと思うんだが、なぜかそれなりに友だちもいるようだ。確か津田が秀樹を評して「中身からっぽ」というセリフがあったと思うが、まさにそれ。何もないし、ある意味では、自分が生きていることにも気付いていないのではあるまいかと思わされるほどに、空虚な人間なのだ。
彼から見られる意志は、呪われ始めてから必死で妻子を助けようとする部分のみ。そこだけはまともなのだが、それ以外の日常の行為は、他人と交流はしているものの、その中に何の含蓄もない、単に息を吐いているだけみたいな言葉で、誰の心に届くのか不明。こうした人って世の中にはけっこういるような気がして、特に個人的には学生時代を思い起こすにそういう奴らっていたよなぁと思うんである。
で、中年になった今ではほとんどそういうことはなくなったが、それは単に人との付き合いが少ない生活をしているからだと思われる。ともかく、前述したようなタイプの人に出くわすと、ゾッとする。怖い。しかし、そうした思いに俺がかられるのは、実は、そういう妻夫木的に見える人たちのことを、冷笑というか、軽蔑というか、そういう風に見ているからであることは否めない。
そういう意味では、俺自身も糞みたいな人間であり、呪われちゃうかもしれんのである。さらにさらに、自分だって空っぽな空虚人に、他人から見られてるかもしんないんだぞってことも充分ありうる話だ。同じ穴の貉だ。
まぁともかく、語り継がれている妖怪だの幽霊ってのは人の暗部を具現化したような存在(存在してないけど)で、そういう意味では八百万の神さまみたいなもんだろう。
ともかくともかく、妻夫木氏はこういう空虚なキャラ演じるとホントに、それっぽい人になりきってて、実は本人もそんな感じの人なのかなと思っちゃうくらいにリアルだ。嘘だと思う人は『ジョゼと』を見ることをお勧めする。マジで、今作の秀樹に似てるから(笑)。自分もそうみられている可能性はあるとか言いつつ、俺は今日から、上述してきたようなキャラは、妻夫木っぽいと評することにした。けなしているようでいて、その演技を褒めています。だって、妻夫木っぽいとしか言いようがないんだもん(笑)。
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