コレクティブ 国家の嘘
あるライブハウスの火災事件の入院患者の多くがなぜか感染症で死亡していた。ジャーナリストが事の真相に迫ると、そこには金に目のくらんだ病院側の陰謀が。そしてその裏には製薬会社と政府の影がちらついていて――。ルーマニアで起きた事件を題材にしたドキュメンタリー。日本も似たような状況になっていることがよくわかる内容。ネタバレあり。
―2021年公開 羅=盧 109分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:2015年、東欧ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”で実際に起こった火災事件を発端に、製薬会社や病院、長期政権に連なる癒着と腐敗の真実が暴露されていくドキュメンタリー。火傷で入院した人たちが次々に細菌感染で亡くなっていったその原因とは……。ルーマニアの国外で治療された患者は助かり、国内の病院で軽傷だった患者が亡くなる事実に不審を募らせたスポーツ新聞の記者がいた。その地道な調査報道に密着取材を願い出たのは、「トトとふたりの姉」のアレクサンダー・ナナウ監督。映画の後半では熱い使命を胸に就任した30代の新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人たちを捉えている。まるでリアルな「スポットライト 世紀のスクープ」だとも評される本作は、命の危険を顧みず真実に迫ろうとする人たちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本をはじめ世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムの問題に真っ向から迫っている。「メディアが権力に屈したら、権力は国民を虐げる。それがこの国と世界で繰り返されてきたことだ」と語るスポーツ新聞編集長の気概に満ちた言葉が見る者の心に突き刺さる。ドキュメンタリーでありながらアカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たしたほか、世界各国の映画祭で28の賞を獲得した。(KINENOTE)
あらすじ:2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名まで膨れ上がってしまう。カメラは事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長を追い始めるが、彼は内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが……。(KINENOTE)
監督:アレクサンダー・ナナウ
出演:カタリン・トロンタン/カメリア・ロイウ/テディ・ウルスレァヌ/ブラッド・ボイクレスク
ネタバレ感想
以前から鑑賞したかったのを、レンタルでようやく観た。事実を基にしているドキュメンタリーってことで、最後まで爽快感なく話は終わる。でも、そこでマジメに仕事をしている人たちの奮闘ぶりには頭がさがりますな。
この作品においては、病院と製薬会社と国家の腐敗ぶりが描かれる。金の亡者たちは世の中にたくさんいるわけで、その亡者たちに賄賂をもらってる政治屋たちが既得権益を手放さないためにズブズブの関係になっている様なんてのは、どこの国でもーーというか、日本だって似たような状況なんであって、とても他人ごとのように見られる内容ではなかったなぁ。
ルーマニアの状況に少し救いがあるなぁと思えたのは、国民が暴動を起こすくらいに怒って政権が代わってたところ。つまり、民衆に力がある。あとは、メディアがそれなりに政府を糾弾するジャーナリズムが機能しているように見えたことか。
本作の前半の主人公とも言える記者さんはスポーツ紙の人ってのがなかなか皮肉で、これは日本の大手メディアがモノを言わない状況とも類似しているように見えた。
終盤のほうで、投票率が低いせいで民衆の決起によって瓦解した以前の政権がまた権力の座につき、再び腐敗政治が行われるであろうことが示唆される。これも自公政権を倒せない日本の今にけっこう似てるよね。
でも、新しい大臣が任命されるくらいに国民は怒っていたのに、その後の選挙で投票率がどうしてあがらなかったのかがよくわからない。その辺は作中でも言及されてなかったように思う。どうしてなんだろうか。
いずれにしても、ディストピア化(あくまで俺から見た)は各国で進んでいるのであろうねぇ。嫌だなぁ。
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