冬の華
―1978年公開 日 121分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:殺した相手の娘を気にかけ、伯父だといつわり文通を続けながら、彼女の成長を見守るうちに再び義理によって人を殺す男の姿を描く。脚本は「君は海を見たか」の倉本聰、監督は「夜の演歌 しのび恋」の降旗康男、撮影は「犬神の悪霊」の仲沢半次郎がそれぞれ担当。(KINENOTE)
あらすじ:関東の東竜会幹部、加納秀次は、会長の坂田良吉を裏切り、関西の暴力団に寝返った松岡を殺害した。殺された松岡には三歳になる洋子という一人娘があり、加納は洋子を舎弟の南幸吉に託して、旭川刑務所に服役した。服役中、加納はブラジルにいる伯父といつわり、洋子と文通を続ける。十五年の刑期を終え、出所した加納は、洋子に加納の手紙を運ぶうち彼女の恋人となった竹田の案内で、洋子の姿を見ることができた。ある日、洋子の手紙によく書かれていた喫茶店で、加納は彼女と出会う。加納がブラジルにいる伯父ではないかと思った洋子は、彼にそれを尋ねようとするが、加納はすばやく彼女の前から去り、店を出て行った。組結成の話も断わり、堅気になろうと決心していた加納は、坂田から、息子の道郎の相談相手になってくれと頼まれる。加納と道郎が再会を喜び合ったのも束の間、坂田は関西の暴力団員に殺される。その仇を討つため、関西連合の三枝と東竜会を裏切った山辺を、道郎が狙っていることを耳にした加納は、坂田から道郎を頼まれたこともあって、苦悩する。山辺殺害を決意した加納は、洋子へ電話をかけ、当分日本には帰れないというのだった。翌日、南に道郎が外に出れないように見張らせた加納は、山辺のもとへ向かう。それは、再び会うことができないであろう洋子の幸福を願いつつ、十五年前の状況に戻ってしまう加納の宿命であった。(KINENOTE)
監督:降旗康男
脚本:倉本聰
出演:高倉健/池上季実子/田中邦衛/北大路欣也/夏八木勲/寺田農/峰岸徹/小林亜星/小林稔侍/倍賞美津子
ネタバレ感想
高倉健が主演を務めるヤクザ映画…なんだけど、シャガールの絵画だの、チャイコフスキーのピアノコンチェルトだの、西洋芸術が演出に使われている、ヘンテコな高尚さのある作品。
健さんが賭場や刑務所にいる場面はいつものこととして、何か高級喫茶みたいなところでクラシック聞いちゃってるのには笑えた(笑)。もちろんカッコいいはカッコいいんだけどね。
ちなみに、健さんが陰で支援してあげている娘だが、さすがにいい暮らししすぎのような。15年もムショに入ってた男が、どうやってヤクザ者の娘をあそこまで育ちのいいお嬢さんにできたんだろうか。舎弟の田中邦衛が儲けてたみたいだから、その金なんだろうけど、住んでいる屋敷も豪華だし、まぁともかく、さすがにいい暮らししすぎだろうとは思ってまった。ついでに言うと、この娘を演じていた若き日の池上季実子は、少し石原さとみに似ていた。
てなことで、黙して多くを語らぬヤクザ者の健さんが、足を洗うのか、慕ってくれている子分たちのためにも組を立ち上げるのか(もしくは親分の仇を討つのか)と、季実子に会うのか、会わないのかーーという2つのことについて、決断しかねるというか、葛藤している姿が描かれる。
はっきり言って、こう書いちゃうとメチャクチャ優柔不断な男なんだけど(笑)、健さんは仁義のある任侠道の男なので、いろいろと責任を背負ったり、道理に合わないことはしたくなかったりするので、煩悶せざるを得ない人なのだ。
しかし、この健さんの立ち居振る舞いをカッコいいと思える人って、今の時代では少なくなってるんじゃないかなぁと思う。悪く言っちゃえば、融通が利かない頑固おやじとも言えるし(笑)。
この作品では、若い頃の北大路欣也や小林稔侍らが観られるが、個人的には峰岸徹と夏八木勲がメチャクチャカッコいいと思った。
ともかく、個人的には好きな内容だし、一般的にも評価の高い作品であるようだが、どうも健さん側の組織の人間たちの構成というか関係性が一見しただけでは理解しづらくて、なんだかようわからんうちに劇終してしまったのは、残念であった。単に俺がアホなだけだが。
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