哀しき獣
―2010年製作 韓 140分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:過酷な運命に翻弄されながら、妻との再会のために孤軍奮闘する男の姿を描くクライム・サスペンス。監督は、「チェイサー」のナ・ホンジン。出演は、「国家代表!?」のハ・ジョンウ、「チョン・ウチ 時空道士」のキム・ユンソク、「フライ・ダディ」のチョ・ソンハ。第64回カンヌ国際映画祭ある視点部門正式出品作品。(KINENOTE)
あらすじ:中国、延辺朝鮮族自治州・延吉で妻と娘と暮らすタクシー運転手グナム(ハ・ジョンウ)は生活が苦しく、娘はグナムの母に預け、妻は韓国へ出稼ぎに行く。しかし妻からの送金はなく、音信も途絶える。妻の入国資金として作った6万元の借金を返すため、グナムは高いレートの麻雀に手を出し、負けてしまう。返済を迫られたグナムは、請負殺人ブローカーのミョン(キム・ユンソク)との取引に応じる。それは借金帳消しの代わりに、韓国へ行き1人殺すというものだった。グナムは密航船で韓国に渡る。ブローカーから中国へ帰る船便の日付、場所を言い渡されたグナムは、標的である体育大学教授キム・スンヒョンのいるソウルへ向かう。グナムは暗殺の準備を進めながら、妻の行方を捜す。妻が水産物流通業者と交際している情報を聞きつけ、彼女のアパートを突き止めるが、男と争って2人で出て行った後だった。グナムがスンヒョンを殺そうとすると、同じくスンヒョンの命を狙っていたバス会社社長キム・テウォン(チョ・ソンハ)の部下によってスンヒョンは殺されてしまう。グナムはミョンに厳命されていた通り、殺しの証拠として死体の親指を切り落とし立ち去ろうとするが、そこに警察が駆けつける。警察を振り切ったグナムは帰国のためにブローカーから指定された場所に行くが、そこは工事現場だった。警察はグナムを犯人と断定し、捜査を開始する。一方、部下の行動を見られたテウォンもグナムを追う。グナムを雇ったのがミョンだと知ったテウォンは部下を延吉に送り、ミョンの殺害を命じる。しかしテウォンの部下を返り討ちにしたミョンは韓国に行き、高額な報酬を条件にグナムの殺害を請け負う。グナムは朝鮮族の女性が殺された事件を知り、その容疑者が妻の交際相手だと知る。警察に直接行くことのできないグナムは、知り合った男に妻の写真を渡して確認に行かせる。男は判別できないにもかかわらず、死体は写真の人だったとグナムに告げる。絶望したグナムは、事件の黒幕を突き止める決意をする。(KINENOTE)
監督・脚本:ナ・ホンジン
出演:ハ・ジョンウ/キム・ユンソク/チョ・ソンハ/イ・チョルミン/カク・ピョンギュ/イム・イェウォン/タク・ソンウン/イーエル/チョン・マンシク
ネタバレ感想
ナ・ホンジン監督の『チェイサー』に続く面白作品。主演は前回と同じくハ・ジョンウとキム・ユンソク。両者ともに前作に劣らぬ迫真の演技。特にキムユンソクが演じるミョン社長は野人のような風貌で鬼人の如き強さ。牛骨で人を撲殺する野獣のような男で、これがともかくすごい。
話の内容は前作よりも登場人物が増えて主人公の目的も殺人と行方不明の妻捜しと2つの軸があるうえ、ミョン社長の勢力の他にも犯罪組織が出てきて、ものすごくややこしい。であるから、俺は何度この作品を鑑賞しても細部のことに理解が及ばず、結局何の映画だったのかよくわからんで鑑賞を終えてしまう。
であるけども、この作品は非常に面白い。てなことで、この記事は単なる感想記事なので作品の謎を考察するような内容ではないことをお断りしておく。だって、よくわかんねぇんだもん(笑)。そのわけのわからない部分に拍車がかかるのが、ナ・ホンジン監督が次に世に出した『コクソン』なんである。あれと比べると『哀しき獣』はマシであるが、やっぱりわからんものはようわからん。
まぁでも、なぜこの作品が好きかというと、前述したミョン社長の圧倒的存在感が楽しめることと、ハ・ジョンウ演じるグナムの食事シーンがいいからである。食っているものは大したものではないのに、ともかく全部おいしそう。『孤独のグルメ』の松重豊に匹敵する食いっぷりだ。
まずは延辺朝鮮族自治州から韓国入りしたグナムが船着き場みたいなところで食ってる飯。何の料理かはよくわからんけども、海苔を口にほうばるその様が、実に食欲をそそる。その次はコンビニのイートインでカップラーメンを立ち食いするシーン。隣の客が食ってるソーセージが目についたグナムはそれが食いたくなっちゃって、自分も購入。店を後にしつつそいつをムシャムシャ食っている。他人のものを欲しがるとか子どもかよと思っちゃうんだが、とても笑えていいシーンだ。
そのほかにも屋台で棒にさしたなんかを食ってるシーンもあって、任務である殺人を遂行するまでのグナムは暇さえあれば何か食ってる印象。その後、逃亡者になってからは、冷蔵庫をあさって、かろうじて残っていた漬物をそのまま食ってみたり、そこでゲットしたジャガイモを汚い自室で蒸かして食ってみたり。このジャガイモシーンも熱いジャガをハフハフホフホフしながら貪りくっているのが、実にいい。飢えた獣だ。
とまぁ、こうしたグナムの食事シーンとミョン社長の鬼のような暴力性を楽しむのがこの映画の俺的鑑賞作法である。他はもう、どうでもいい(笑)。
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