チェイサー(2008)
―2009年公開 韓 125分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:韓国で実際に起きた連続殺人事件をベースにしたクライム・サスペンス。長編初監督のナ・ホンジンが、狂気のシルアルキラーとただ一人闘いを挑む元刑事との緊迫感溢れる追走劇を描く。出演は「ヨコヅナ・マドンナ」のキム・ユンソク、「ブレス」のハ・ジョンウ、「連理の枝」のソ・ヨンヒなど。(KINENOTE)
あらすじ:元刑事のジュンホ(キム・ユンソク)が経営するデリヘルの女たちが相次いで行方をくらましていた。彼女たちに渡した高額な手付金を取り戻すため、怒り心頭のジュンホは捜索を開始。失踪した女の車の中にあった携帯電話の着信履歴に“4885”という数字を見つける。部下から、たった今、ミジン(ソ・ヨンヒ)を斡旋した客の番号も末尾が同じだったことを聞き、ジュンホは二人の後を追ってマンウォン町へと向かった。一方、住宅街に佇む大きな家に迎えられたミジンは、男によって手足を縛られ監禁されていた。行方不明の女たちがこの男に殺されたことを察したミジンは泣き叫び必死に命乞いをするが、金槌とノミで頭を打たれてしまう。ミジンに電話が繋がらずイラついていたジュンホは、車の接触事故をきっかけにヨンミン(ハ・ジョンウ)という怪しい男に遭遇、長い逃走劇の末、ついに彼を捕獲し警察に引き渡す。「女たちは俺が殺した。そして、最後の女はまだ生きている」と告白するヨンミンだったが、自供のみで何一つ物的証拠がない。そんな状況にイ刑事(チョン・インギ)たちは焦っていた。遺体を発見しない限り、12時間後にはヨンミンを釈放しなくてはならないのだ。ヨンミンは殺し方や死体の処理方法については詳細に語るが、それ以上については固く口を閉ざしていた。刑事たちが遺体の捜索に躍起になる中、ジュンホは一人でミジンを捜し回っていた。古巣の警察に協力し、DNA鑑定をするためミジンの家に向かったジュンホは、そこでミジンの幼い娘ウンジ(キム・ユジョン)に出会う。少女を一人残していくことができなくなった彼は、嫌々ながらもウンジを連れていくことにする。そんな中、ミジンはやっとのことで手足の拘束を解き、家から逃げ出し、近くの雑貨店に駆け込んだ。しかし、その店には、検事の判断により証拠不十分で既に釈放されたヨンミンがタバコを買いに向かっていた……。(KINENOTE)
監督・脚本:ナ・ホンジン
出演:キム・ユンソク/ハ・ジョンウ/ソ・ヨンヒ/キム・ユジョン
ネタバレ感想
実話がベースになっている作品らしい。今作を初めて観たときは、衝撃を受けた。面白すぎたからだ。なので、繰り返し2回目を鑑賞した。ほんの少し、希望がなくもないが救いのないラスト。あれもまたいい。主人公の元刑事、ジュンホがいい奴なのか悪い奴なのか、そのどっちとも受け取れるんだけど、心情が読み切れないところもいい。人間的だ。
いろいろ想像を巡らせるに、ジュンホはミジンに対して、もしかしたら別の感情(要するに好き)を抱いていたか、むしろ彼女と過去に関係があったんではないかなども邪推してしまうくらいに、ジュンホはよく分らん奴だ。だが、元刑事ということでなかなか有能。
というか、他の警察たちが無能すぎるんだが、ともかく、ジュンホは自分の力でミジンを何とか救出せんと頑張る。そんで、彼女の娘の面倒をできるだけ見てやる。ここまでくるとやっぱり、彼が単に手付金目当てで頑張っているんではないんだろうなと思わせるんだけど、だけども、やっぱり何を考えているのかはよくわからん。でも、人間的だ。
その一方で、犯人であるヨンミンのほうがわかりやすい。彼は性的不能者で、女性と性交ができない代わりに、殺人でその欲望を満たすのである。そして、物的証拠を出さずに犯行を行うため、捕まっては釈放されてを繰り返している。しかも狙ってそれをやってのけている、汚い野郎なのだ。
今作によって大量の証拠が出てくることになったのは、まさにジュンホの執念があったからで、しかし、その執念が実った時に、救うべきミジンはもう生首にさせられているのだ。畜生。
初見のときは、ミジンが一度、監禁された屋敷から脱出できてホッと胸をなでおろしたもんだが、ヨンミンに偶然にも発見されて殺されてまうという展開に、沈んだ。気の毒すぎるしひどすぎると思ったが、やはりその悲惨さも含めてこの作品は素晴らしいのである。
ハ・ジョンウもいいけど、この作品でもっといいのはキムユンソクだ。メチャ男前ってわけではないんだが、社会の荒波にもまれたせいなのかなんなのか、もともとピュアな人間だっただろうに、人生に疲れてしまってヤサグレ感丸出しのジュンホをかっこよく演じている
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