脱獄広島殺人囚
―1974年公開 日 97分―
解説とあらすじ・スタッフとキャスト
解説:殺人罪で四十一年七カ月の刑に服する実在の人物をモデルにして、あくなき自由への渇望から七回に及ぶ脱獄を敢行した男の執念を描く。脚本は「あゝ決戦航空隊」の野上龍雄、監督は「安藤組外伝 人斬り舎弟」の中島貞夫、撮影は「実録飛車角 狼どもの仁義」の赤塚滋がそれぞれ担当。(KINENOTE)
あらすじ:終戦の混乱期であった昭和22年4月19日夜、植田正之は、仲間の田上と共謀し、外国人の闇屋とその女を殺害、モルヒネを強奪した。やがて二カ月後に逮捕された植田は懲役二十年の刑を受け、広島刑務所に入所した。翌23年4月13日、脱獄に成功した植田は、神戸、妻昌代のいる大阪に潜伏していたが、同年5月3日、関西映劇で観劇中に発見され、逮捕された。再び広刑に戻された植田は、脱走罪が加算され、計二十一年三カ月となった。同年9月、植田は服役中の岡本組々長・岡本清次郎の協力を得て、房仲間の末永と小島の三人で再び脱獄。そして、妹の和子がいる郷里四国の松山・草鹿村に、山本清と名乗って潜伏した。ここで植田は、牛の密殺グループの親分となって妹一家を養っていたが、24年4月、女郎屋で喧嘩ざたとなり、警察に捕われた植田は指紋から身元が割れてしまった。翌5月、広刑に戻された植田の刑は、二十二年七カ月となった。既に捕われていた末永が第八工場で、名古屋の親分・前戸に虐待されている事を知った植田は、前戸にかけ合うが、話がもつれ前戸を殺してしまった。この事件で八年の刑が加算され、計三十年七カ月となった。さらに前戸の屈強な舎弟吉原にも勝負を挑まれ、植田は風呂の中で吉原を不意討ちで殺害してしまった。これで刑は七年増して三十七年七カ月。この殺人で広刑の地獄房に三カ月間投獄された植田は、25年3月にやっと地獄房から出されたが、保安課長の堂本に狂人呼ばわりされ逆上し、机上にあったナイフで堂本に斬りつけた。この殺人未遂で刑はさらに四年加算され、計四十一年七カ月になった。同年8月、この事件の裁判の時、植田は突発的に逃亡、その足で草鹿村に立ち寄り、久々に妹と楽しい一刻を過ごした。しかし、牛の密殺仲間が警察に密告したために、警官隊に包囲されてしまった。格闘の末必死に包囲網を突破した植田は、生への執念と、あくなき自由を求めて歩き始めるのだった……。(KINENOTE)
監督:中島貞夫
出演:松方弘樹/梅宮辰夫/西村晃/伊吹吾郎/小松方正/渡瀬恒彦/金子信雄/神山繁/室田日出男/志賀勝/川谷拓三/八名信夫/若山富三郎
ネタバレ感想
実在の人物をモデルにした作品らしい。ともかく松方弘樹が終始ギラギラしててカッコいい。
あとは終戦直後の昭和の田舎町の暮らしがけっこう殺伐としてて、みんな食うために過酷な生き方をしてたんだなぁなんてことを物語とあまり関係ないところで感じた。たとえば、牛を隠れてぶっ殺して肉にして生計たててる人たちの暮らしとか、マジですごい。エネルギー感じちゃう。
そして、それらを演じる役者がともかくギラギラしてる。これが昭和のバイオレンス作品のパワーだよなぁって思っちゃう。昭和がいいとかそういうことが言いたいんじゃなくて、ともかく同じ日本人とは思えない凄みを感じるのだ。
で、内容はというと、後先考えず悪さをしてた松方弘樹扮する植田が、強盗殺人でムショにぶち込まれるんだが、そこからはもう、脱獄。捕まる、脱獄、捕まるの繰り返し。刑務所側も無能だけど、植田も勢いで生きてる人間なので、脱獄後の動きが適当すぎて、心が休まる暇もない。それでもともかく娑婆の空気が吸いてぇと脱獄を繰り返す。
彼の頼る先は妹の元しかなくて、かなり妹にも迷惑かけまくりなんだけど、なぜか妹も兄貴に情があるようで、彼を助けてやろうと警察の足を引っ張ったりして兄貴を逃してやろうと頑張るのである。血のつながりとはかくもやっかいなものなのか。
てなことで、バイオレンスな犯罪作品で、タイトルもまぁそのまんまなんだけど、最終的にはその無茶苦茶ぶりに笑えてきちゃって、特にラスト、線路の上を歩きながら大根をかじる松方の姿は必見。しかも、道端に落ちてたシケモク吸うために線路に石打って火をつけようといういじらしさ。線路に響く石の音がむなしく響きながら劇終を迎えるシーンは笑えてくる。
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