カエル少年失踪殺人事件
事実を基にした物語だそうです。韓国では有名な未解決事件の一つだとか。確かに謎な事件だなぁ。とは言えこの映画の全てが事実であるわけではない。それも含めてなかなか楽しめる作品でした。ネタバレあり。
―2012年 韓 132分―
解説:2006年に時効を迎えた韓国三大未解決事件の1つ“カエル少年失踪殺人事件”を題材にしたサスペンス。“カエルを捕まえる”と言って出掛けたまま行方不明になった5人の少年の謎を追う。監督は、「リターン」のイ・ギュマン。出演は、「MUSA-武士-」のパク・ヨンウ、「ファン・ジニ 映画版」のリュ・スンリョン。(KINENOTE)
あらすじ:1991年3月26日、統一地方選挙の日。大邱近郊・トアプ山のある麓の村で、カエルを捕まえに行くと言って出掛けた小学生5人が行方不明になる事件が発生する。MBS放送のカン・ジスン(パク・ヨンウ)は、事件を暴いて特ダネのスクープを狙う。ファン・ウヒョク教授(リュ・スンリョン)は犯人像を分析し、パク・キョンシク刑事(ソン・ドンイル)は子供たちを必死になって捜しまわる。あることをきっかけに、それぞれの思惑で事件を追いかける彼らの疑惑の目は、被害者の少年の父親に向けられる……。(KINENOTE)
監督:イ・ギュマン
出演:パク・ヨンウ/リュ・スンリョン/ソン・ドンイル/ソン・ジル/キム・ヨジン
クソ野郎が主人公です
この作品、どこまでが事実ベースなんだろうか。冒頭、田舎町に住む5人の少年たちが、遊んでいる最中に消えてしまう。で、彼らの家族は警察やら霊媒師? やらに頼って必死で子どもたちを捜すんだけども、手がかりがちっとも出てこない。いたずらに時が過ぎるだけで、数年後、事件は風化しかかっていた。
その町にテレビ局で番組制作をしている主人公、カン・ジスンがやってくる。この人は中央の局で鹿のドキュメンタリー番組を撮って賞を受賞したやり手。でも、その撮影手法がほぼヤラセだったらしく、上司に睨まれて左遷されてきたのだ。
こいつが本当に嫌な奴。自分のことを有能だと思っていて、出世欲でギラギラしている。面白くて視聴率が高い番組が撮れれば、ヤラセだろうがなんだろうが、知ったこっちゃないという感じ。
左遷されてきた町に来ても、その態度は変わらない。左遷先の部長が少年失踪事件に関する取材をしている時も、終わったコンテンツにしがみついてアホじゃないですか。みたいな調子なのだ。
ところが、ちょっとしたことで事件に興味をもって調べてみると――こいつは特ダネになるやも! と手のひら返して取材をし始めるんである。本当に嫌な奴。奥さんが美人なところがさらにムカつく(笑)。
犯人はお前だ! お前のはずだ! お前だと思われる・・・
で、こいつとタッグを組んで事件をほじくり返すのが、心理学者で大学教授のファン先生。この人はなかなか有能な人のようだ。だけど、自分の分析の正しさに固執しすぎちゃってて、考え方が主観的で独断的。なんと、事件の犯人を失踪した男の子の父親と仮説を立てて、取材というか捜査みたいなことをするんである。
父親の家に乗り込んで取材するときからカンは撮影を始めているし、レコーダーで声も録音している。つまり、番組になることを前提にネタ集めをしているわけだ。この時点でけっこうブッとんでる。
そうやって父親=犯人説を証明するため、2人は証拠探しに奔走するけど、なかなか証拠は出てこない。当たり前である。なぜなら自分たちがそう思い込んでいるだけで、実際父親は犯人でも何でもないのだ。でも、2人はそう思い込んでいるので、父親の家に子どもたちの遺体が埋められているはず――と断定し、警察まで呼んで家のトイレや床やらを掘り返すのだ。
オイオイオイオイ
駄目でしょ、それ。何で警察も証拠がないのに、そんなことに手を貸せるんだ? そして、カンとファンはなんで憶測だけでそんな大胆なことできるんだろうか。マジで神経疑う。でも、それをやっちゃうのである。
間違いでした。ごめん!
どうも実際の事件でも初動の時点から警察の捜査にかなり不手際があったそうなんだけど、洋の東西を問わず、実際の事件を題材にした物語って、警察の対応が糞過ぎるケースの話が多いよね。
にしたって、証拠もないのに人の家に乗り込んじゃう警察ってありえないと思うんだが。で、結局は遺体どころか証拠の一つも出てきやしない。
事件のことが気になって仕方ない
ファン先生はその後、名声を失い落ちぶれていったみたい。で、なぜかカンのほうは中央の局に復帰するんである。なんでだろうか? 失敗したけど話題性がある映像が撮れたから? よくわからんが、いずれにしてもカンはいろいろと後悔をして事件を引きずるんだけども、数年後、ちょっとしたきっかけで、1人で事件を調べることになる。
というのも、なんと少年たちの遺体がついに発見されるのだ。カンはファン先生に偶然再会する。そして先生から、「お前は俺を盾にして責任を負わせたから生活が壊れなかっただろうが、俺は台無しになったんだぞこの野郎!」的な非難をされる。まぁ確かにそうではあるな。ファン先生も自業自得だが。
その後、遺体の骨などを調べた結果、子どもたちの死因は他殺であったことが判明する――。
犯人はお前だ! その2
こっから後は、多分にフィクション色が濃くなってくる。カンは知り合いの刑事やらに頼りつつ、独自に事件を追い続けるわけだが、なんと犯人らしき人物を特定するに至るのだ。ある意味執念である。少年らの遺族たちは遺体が発見されるまでの数年間、やれるべきことをやった。警察は遺体が見つかるまでも、見つかった後も、本腰を入れて捜査をしてくれない。カンだけが、罪悪感なのかなんなのか知らんが、事件を調べ続けて、容疑者みたいなやつに直接会うところまでこぎつけるのだ。
でも、これっておかしくないか? カンは不法侵入とかしてまで、容疑者を調べ続けるわけだが、その過程で容疑者に身元がばれて、自分の娘を誘拐されかけている。なんで容疑者は娘を殺さなかったのかも謎だが、カンはそのあと、単独で容疑者を追い詰めるのだ。んで、取っ組み合いの喧嘩をするのである(笑)。
なんなんだそれは(笑)。なんで途中まであんなに刑事を頼っておいて、そこだけ1人で行くのか意味がわからん。というか、あそこまで人物特定できているんなら、警察が介入できるような動きにもっていけると思うんだけどなぁ。ここが無理やりっぽく感じたのである。
容疑者の眼つきヤバ過ぎ
しかしまぁ、そこはもう突っ込まないでおくとして、容疑者は牛を解体する仕事をしているんである。牛の返り血を浴びた状態でカンと喧嘩するわけだが、この時の容疑者役の眼がやば過ぎる(笑)。絶対に人を殺していると思わせる眼つきでカンを凝視するのだ。
で、この容疑者なかなかパワフルで、カンは手も足も出ずにボコられて地面にお寝んね(笑)。容疑者はカンに向かって自分が少年たちを殺したことを認めるような発言をする。そして「だが、証拠がないだろう」とか言って去っていく。
オイオイオイオイ
なんなんだそれは。ほぼ自白じゃん。そんなことして逃げ切れんのか? なんでそんな余裕なんだよ。お前がカンに犯人と特定されたのは、警察から送られてきた似顔絵のFAXを使ってだぞ。自動車のナンバーも警察に知られてるんだぞ。
なのに、この物語は「~年に時効が成立した」と解説を入れて終わっちゃうのである。なんかなー、事実を基にしたんなら物語上でも逮捕の流れにはできないんだろうけど、それだったら容疑者と対決する描写の必要なんてなかったと思う。
途中まではすごい楽しめただけに、最後のほうがちょっともったいない作品でした。でも総じて言えば、面白いのは確かです。
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