エンド・オブ・トンネル
冒頭からいろいろの伏線が張り巡らされて、ラストでそれらがきちんと回収されて物語は劇終を迎える。という意味では、最後まで楽しく観られる娯楽作品として十分な完成度の作品。要は、楽しめるのである。しかし、突っ込みどころがあるのも確か。ネタバレ少し。
―2017年 亜・西 120分―
解説とあらすじ・予告とスタッフ・キャスト
解説:「人生スイッチ」のレオナルド・スバラーリャ主演の犯罪スリラー。事故で妻と娘を失い車椅子生活となったホアキンは、生計のために家の2階をストリッパーのベルタと娘に貸す。2人に妻子の姿を重ね、明るさを取り戻していたある日、地下室で奇妙な音を聞く。出演は、「ザ・エンド」のクララ・ラゴ、「木曜日の未亡人」のパブロ・エチャリ、「パンズ・ラビリンス」のフェデリコ・ルッピ。監督は、ロドリゴ・グランデ。未体験ゾーンの映画たち 2017で上映。(KINENOTE)
あらすじ:ホアキン(レオナルド・スバラーリャ)は事故で妻と娘を失い、車椅子生活に。自宅に引きこもり孤独に暮らしていたが、徐々に金も底をついたので、家の2階を貸し出すことにした。ストリッパーのベルタ(クララ・ラゴ)とその娘が住み始めると、2人に妻子の姿を重ねたホアキンは次第に明るさを取り戻していく。そんなある日、ホアキンは地下室で奇妙な音を耳にする。それは、地下に掘ったトンネルから銀行に押し入ろうと企てる悪党たちの声だった。ホアキンは面白半分で彼らの動向を監視し始めるが、ベルタが彼らの協力者だと気づく。ホアキンはベルタ母娘を泥沼から救い、自分の人生を変えるため、不自由な身体を逆手に取って犯罪者たちから現金を奪おうと計画する。(KINENOTE)
(Klockworx VOD)
監督・脚本:ロドリゴ・グランデ
出演:レオナルド・スバラーリャ/クララ・ラゴ/パブロ・エチャリ/フェデリコ・ルッピ
伏線回収しながら最後まで鑑賞者を引っ張る力はある
車椅子生活の独り暮らしの男、ホアキンの家に、母娘の親子が部屋を借りにくる。母はストリップダンサー、娘は精神的なトラウマでもあるのか、2年ほど口を聞いていないそうだ。
老犬と共に寂しく暮らしていたホアキンの生活に、束の間の潤いをもたらす母娘。しかしこの母は、男の家の隣の物置? みたいな部屋で穴を掘っている怪しげな男たちのグループの知り合い。凶悪そうなボスの愛人であることがわかる。
このグループは近くの銀行の金庫から金品を盗むために、ホアキンの家の隣の床に穴を掘って、地下から銀行に忍び込もうとしているらしい。ホアキンは自宅の地下の壁越しから、その計画を知ることになる。で、彼はいろいろと策を弄して強盗たちからお宝をかすめとってやろうと画策する――というのが大体のあらすじ。
冒頭からいろいろの伏線が張り巡らされて、ラストでそれらがきちんと回収されて物語は劇終を迎える。という意味では、最後まで楽しく観られる娯楽作品として十分な完成度の作品と言えるのではないか。要は、楽しめるのである。しかし、突っ込みどころも多い作品だ。
母とホアキンの距離間の描き方が適当
例えば、母の行動が謎すぎ。ストリップダンサーとか職業はどうでもいいのだが、とりあえずあんた、働きに行けよ(笑)。踊りが仕事の癖に、踊ったのは序盤、ホアキンの前でだけ。なんなのあれは? 誘惑してんの? 彼女は強盗のボスの命令でホアキンのところに送り込まれているわけだから、好感をもたれたほうがいいのはわかるけども、とりあえず働かないと怪しまれるのではないかねぇ?
で、結局素性がバレるものの、ホアキンは彼女に好意を持ったらしく、娘と彼女を助けようとする。が、彼女はそれを拒否する。それなのに、ラストにああして何事もなく丸く収まっちゃうなら、そこに至るまでの2人の感情の動きや歩み寄るための描写は必要なのではないかと。
いっぽう、娘のほうは喋らない設定がそこそこ活かされていた。結末部分の危機を乗り切るのも、彼女のちょっとした癖のおかげで、終盤で重要な役割を果たすアイテムとなる、時計が手に入るわけだし。
主人公の素性がけっこう謎
ホアキンは謎が多い。KINENOTEのあらすじによると、彼は事故で妻と娘を失ったうえ、自身は車椅子生活を余儀なくされているらしい。え? そうだったの? 俺は作品中からはそこまでの細部は読みとれなかった。妻子が死んだのか、離婚したのか、どっちなのかは、観続けているうちに明かされるのだろうと思っていたのだ。しかし、そんな描写はなかった(笑)。俺の目が節穴なのか?
いずれにせよ、この記事を書くためにKINENOTEのあらすじを読んだことで、なるほどと思わされた。そういえば、庭に大破した車が放置されていたなということを思い出したからだ。でもさぁ、庭で事故ったわけじゃあるまいし、何で事故車が庭に放置されてんだ。やはり、納得はいかないですな。
ついでに言うと、彼は家賃収入で生きてる人なのか? なんか冒頭にストリップ母が、立ち退き勧告的な書類を目にしてたけど、あれはなんだったんだろうか。いずれにしても、ホアキンの職業はよくわからん。にしては、地下室にあるいろいろの道具を駆使して様々なモノを作成してしまう器用さ。なんなんだろうか。あと、タバコ吸いすぎ(笑)。
腐しているけど、楽しめる作品です
てなことで、ホアキンと母、この2人の関係性がうまく描けていないから説得力のない部分もあるんだけども、物語の興をそぐほどではないので、楽しく観られる娯楽作品です。褒めてないように読まれちゃうかもしれないけど、それはおもしろいと思う部分を俺が端折って書いているから。ちゃんと書けよと思われても仕方ないが、そこは鑑賞してもらうのが一番だし。暇つぶしで観るのには十分オススメできる映画です!
コメント
読みやすく、また見ようと思わせていただきましたよ。
あなたには才能がある。ただ経験や聞き取りが圧倒的に足りない。
想像力は中の上のはずなのにもったいない。
ちなみに人物描写については
わざとぼかしてあるのです。
謎めかすというよりは単純なる人生においての人の過去はトンネルの中のように闇であり他人が簡単に判断できるものではないということをそのまま表現しているだけです。
踏み入るのもまた嫌がられる場合も当然あるわけです。
ですからベティにも闇のトンネル部分が作られているのです。
同時に闇から抜けられない象徴として(おそらくは事故の)車も引き取っているのです。
これに関しては事故した車を?とあなたは微妙な感覚かもしれません。
しかし、思いでならおいておく理由にはなるでしょう。
車とて家族の一員、事故もおそらくはもらい事故。
一般論としても、もらい事故、自分のミスそして車の故障であろうと交通事故の場合は車自体を忌まわしいものとして捉えるのは半数以下です。くるまにごめんね、と思うものです。
日本は土地がありませんからね、裁判証拠でない限り、おいておく人は少数派です。
そもそも車、滑り台、などは写真、子供部屋とともに思い出の象徴です。
現実的なアイテムとしての深い意味はありません。
ついでに妻子を失ったのは事故なのでは、という説明を持たせたわけですね。
もうこの映画の内容を覚えてないんですが、解説ありがとうございます。自分の印象と異なる見方をした人のご意見は、ありがたいです。このページを見てくれた他の方にも参考になりますからね。世界で七番目の阿呆さん、コメントありがとうございました。