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映画 ザテキサスレンジャーズ ネタバレ感想 ボニーとクライドを殺す実話​

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ザ・テキサス・レンジャーズ​

―2019年製作 米 132分―

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あらすじ・スタッフとキャスト

あらすじ:冷酷な銀行強盗ボニーとクライド逮捕に駆り出された2人の元テキサス・レンジャーが、経験に裏打ちされた直感を頼りに悪党を追い詰める。史実に基づく犯罪ドラマ。(KINENOTE)

監督:ジョン・リー・ハンコック
出演:ケヴィン・コスナー/ウディ・ハレルソン/キャシー・ベイツ/ウィリアム・サドラー

ネタバレ感想

『俺たちに明日はない』の逆視点

実話をもとにした物語。ボニー&クライドを題材にした映画といえば、『俺たちに明日はない』がすぐに思い出されるが、この作品は、彼らを捕らえる側の人間の視点に立った作品である。で、感想としては先に述べておきたいのは、とても面白い作品ということだ。

『俺たちに明日はない』も何度か鑑賞しているけども、内容を忘れてしまっているくらいなので、さほど思い入れはない。対して本作については、描き方の秀逸さや込められたテーマが非常にわかりやすいうえ、主演のケビン・コスナーとウディ・ハレルソンのコンビがとてもよく、かなり楽しめた。

実話をもとにしているからか、さほど激しい銃撃戦があるわけではない。ラスト、ボニーとクライドをオーバーキル状態の蜂の巣にする以外、アクション的な要素はほとんどない。しかし、鑑賞するほうもそれを期待している人はほとんどいないだろう。

人を殺して義賊になるか、隠して生きるかは立場によって変わる

では何が楽しめるかというと、暴力――この作品においては殺人であるが、その行為をしているボニーとクライドが一般人から義賊として祭り上げられているいっぽうで、そのことを否定せざるを得ない隠して生きるレンジャーたる立場の2人の男の抱える、取り返しのつかない過去に対する悔恨の情が色濃く表れている部分である。

しかもそれが、過去シーンを挿入することなく、セリフで少し説明されるだけで鑑賞者に訴えてくるところがすごい。鑑賞した人間に、大量の人間を殺してきた人間が背負っているものの大きさと、それによる慙愧に堪えない心情がよく伝わってくるのだ。それを可能にしているのはやはり、2人の役者の演技によるところが大きいだろう。

彼ら二人は、若き日のレンジャー時代の活躍により、作品内の1930年代でもそれなりに名の知られた人物であることがわかる。ある人は彼らを「地獄に落ちる」と評し、ある人は彼らを英雄扱いするむきもある。ところが、二人は過去を誇りにして生きてはいない。過去は栄光のときではないのだ。

そんな彼ら、とくにケビン演じるレンジャーが、ボニーとクライドを蜂の巣にした後に述べる「手を上げろ(manos arriba 確かこういうスペイン語)」という言葉に、彼の引きずってきた過去への慙愧の念が垣間見える。しかし、彼にとっては、同じ過ちを繰り返す行為だとしても、ボニーとクライド殺しを遂行しなければならないという思いがあったのだろう。悪党を倒すのは、悪党である自分たちしかいないという思いの表れだろうか。

クライドの親父は何でも人のせいにしている

ちなみに、終盤近くで、ケビンがクライドの実家を訪ねるシーン。親父は犯罪者とは言え息子をまだ愛しているようだ。そして、だからこそクライドを殺してほしいとレンジャーに頼む。そのときのケビンと親父の会話中、ケビンが親父に何かを伝えるのをあきらめたような描写がある。あれは、親父に「おまんの息子の育て方にも落ち度があったんだぞ」と言いたかったんだろうなと俺は思った。

なぜならこの親父は、息子のことを愛している割に、殺人者になることを止められなかったからだ。親父の話によると、クライドは息子のころ、飢えをしのぐために盗みを働き、それ以来警察に目をつけられることになったと言う。親父はそれについて「みんなが飢えていたんだ」とか何とか言うんだけど、飢えてても盗み働いてない人もいるだろ――と思いませんかね?

要するにこの親父、息子が悪さを働いたことを世の中のせいにして、まるで他人事のように語っているのである。おまんは父としての役割をきちんと果たしたのか? クライドが犯罪に走ったのは、お前のせいでもあるんだぞーーとケビンは言いたかったんだと思われる。しかし彼はそれを言わずに、「なんだろうが、クライドはぶっ殺す」的なことを言って、親父のもとを去っていく。非常に印象的なシーンだ。

立場は違えど犯した行為は同じ穴の狢

本作では、ボニーとクライドはほとんど姿を現さない。しかし、それを英雄視する大衆の姿はそれなりに散見される。特に、ラスト近くの射殺された2人に人々が群がるシーンは、大衆の無知さというか考えの浅はかさを感じさせる嫌な描写でありつつ、鑑賞している自分自身も、一皮むけば、同じ穴の狢かもしれないという思いも起こさせる。つまり、あの無知さ、浅はかさにより、自分も人を殺すかもしれないということだ。

そんな思いに至らされるのは、彼らを射殺する側の人間も、犯罪者とはいえ、彼ら以上に人を殺してきた人間だからだ。やっていることは、どちらも同じだ。しかし、レンジャーの二人に肩入れをしたくなるのは、彼らが常識人であるから。自身が重い刑に処されるべき罪人であることを自覚しつつも、世間一般の善悪の基準から見れば、彼らはまっとうに生きてきた善人だからである。

しかし、その善悪の基準などというものは、本来はどこにもないのだ。だからこそ、彼らは今でも苦悩しているのである。真に自分の行いが善だと確信しているのなら、老いぼれるまで苦悩を抱える必要などない。そして、そんな2人だから、ボニーとクライドを殺せるのだ。

善悪の基準は抽象的で、確たるものはない

彼らのような善悪の狭間で揺れていることこそが、人間らしいのであり、その抽象的な言い方しかできない、きちんと境界をつくれないものとして、世間一般の善悪の基準は存在するのである。要するに、何が善で悪かなど、何人にも断言できないものなのである。しかし、その基準があいまいだとしても、それを用いないと人間は社会を形成できないし、その秩序を保てないのである。

最後に、個人的にもっとも気に入ったシーンは、ウディ・ハレルソンがバーのトイレでチンピラに襲われそうになり、返り討ちにするシーンであった。あそこは最高だ。

善悪を超えた言葉を獲得するために、みんな人間であることをやめよう。

この作品は、ネットフリックスで鑑賞できます。

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